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【連載】サービス産業の業務仕組み化

2022年7月15日

【第4回】業務基準書作りは優先順位付けがダイジ 後編

業務棚卸しの進め方
 業務棚卸しのやり方には、業務フローに沿って洗い出していく演繹的アプローチ と、思いつくものを洗い出したのちに整理する帰納的アプローチの2つがありますが、コンサルティングの現場で多いのは帰納的アプローチです。その理由は帰納的アプローチの方が早いからです。
 進め方としては、職場のメンバーを集め、模造紙と付箋紙を用意します。そして、仕事の大きさは考えず、思いついたものをとにかく書き出していきます。10~20 分くらい経過すると、8~9割くらいの仕事は洗い出されます。洗い出した付箋紙を仕事の流れ順に模造紙に貼り出していきます。貼り出すとき、業務レベルなのか、作業レベルなのか、詳細作業レベルなのか、仕事の大きさを考えながら整理していきます。
 付箋紙で具体的な仕事を検討していくことで、議論が空中戦にならず、メンバー間で仕事の大きさの認識もあっていきます。
 次に、付箋紙の貼られた模造紙を見ながら漏れがないかを確認します。まず1日の仕事に漏れがないかを確認し、その後、同じ要領で週次、月次、年次の仕事に漏れがないかを確認します。時系列に沿って確認することで、漏れがほとんどなくなります。
 最後に業務基準書を作成すべき仕事をリストアップします。付箋紙に書かれた仕事には、会議や清掃など、業務基準書を作らなくてもよいと思われる仕事もリストアップされているので「業務基準書を作成する仕事」「チェックリストを作成する仕事」「まったく文章化が必要のない仕事」に分けます。
 
図表.4 付箋紙を使った業務棚卸しの実施のイメージ
 
 どの仕事に業務基準書が必要なのかは、企業の方針や管理の仕組みによって異なります。たとえば、同じ清掃の仕事でも、企業の方針によってクリンリネスを強化したいのであれば、業務基準書を作成する必要があるかもしれません。また、クリンリネスを強化する方針は同じでも、業務基準書で行う方法もあれば、店長がチェックすることによって行う方法もあります。どのやり方なら徹底されるかを考え、業務基準書を作成すべきかを検討します。
 最終的には業務を大まかな作業時間とともにエクセルにまとめていくと、優先順位がつけやすくなります。
 
図表.5  業務棚卸表のイメージ
 
業務棚卸しで見つかった業務の問題点
 業務棚卸しをするだけでも問題点が数多く見つかることがあります。最後にコンサルティングでのできごとをお伝えします。
ある小売チェーンでは、業務棚卸しを行った結果、日々の仕事の中で「店長の報告書作成業務 」に時間を要していることがわかりました。総務・経理部や商品部、オペレーション部など、多くの部門別に報告書を作成しており、その後の調査で1日2時間以上、時間を費やしていることがわかりました。店長は、これまで長年、当たり前にやってきたので不思議に思わなかったとのことですが、洗い出して数字にしてみると膨大な時間となっていました。この小売チェーンでは、即刻、報告する内容を見直し、報告書を1枚に集約することで、店長の報告書作成業務を30分に短縮することができました。創出された時間を人材育成や売場づくりにあてることで、サービスレベルと売上げの向上につながったといいます。
また別の小売チェーンでは、レジ業務の棚卸しで、ポイントカードや割引チケットの多さに目が向きました。曜日別割引や高齢者向けポイント、ポイントアプリなど、数多くの販促企画がありました。いろいろな経緯で始めたものの、新しく始めるだけで、古い施策はやめないため、どんどん販促企画が積みあがっていたのです。販促企画が多ければ多いほど複雑になり、社員にも顧客にも伝わりにくくなります。また社員がその制度を熟知していないことで、顧客から指摘を受け、クレームに発展することもありました。このようなことは、本部の会議の中で報告はあがっていましたが、現場の大変さは伝わっていませんでした。改めて棚卸しをして一覧化すると、その数の多さに驚き、見直すことが決まったのです。

このように見える化し、一覧化することで、業務の問題点に気がつき、改善につながるのです。