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【連載】CS向上を科学する

2017年6月9日

【CS向上を科学する:第44回】事例に学ぶ優れたサービスのポイント:「ミールケア」

 




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


 

サービスの人材育成に問題意識を持っているサービス事業者の方も多いのではないでしょうか。専門知識や業務スキルの習得、ビジネスマナーの研修などは既に取り組んでいるサービス事業も多いと思いますが、これはあくまでも「失点をしないための人材育成」に重きを置いて行われていることが多いようです。そこで今回は、サービスの価値を高めるためのサービス人材の育成のヒントを「第1回 日本サービス大賞※」の受賞サービスの中から紹介したいと思います。

※サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度

 

第1回日本サービス大賞 経済産業大臣賞
子どもたちに食文化を伝える「考食師」による給食サービス(株式会社ミールケア)


出典:第1回 日本サービス大賞 

長野市に本社を持ち、幼稚園や保育園などの受託給食事業を全国に展開しているミールケア。一般的に受託給食のサービスは仕出しが中心ですが、ミールケアのサービスはそうではありません。独自の社内認定資格で「考食師」と名付けられた、「和食の伝統と文化を伝える食育の伝道師」がサービス提供を担います。考食師が各園に常勤し、園と一緒になって子どもの成長期に合わせた食育計画を立てて、正しい子どもの舌を創るための給食づくりに加え、日本食の文化や礼節、歴史を伝えます。「考食師」から学んだ知識や文化、礼節を自宅で親に話す子どもも多く、親子のコミュニケーションや、子どもの成長を実感する機会もつくり出しているといいます。この結果、ミールケアのサービスの価値を実感した保護者や園からの紹介が続き、営業活動をしなくても新規受注が毎年20%以上増加しており、継続的に増収増益を実現しています。

この、受託給食サービスの常識を覆すようなミールケアのサービスは、第1回日本サービス大賞で経済産業大臣賞を受賞しました。その受賞理由はこちらです。

【受賞理由】
「考食師」が各園に常勤し、“正しい子どもの舌を創る”給食づくりに加え、「給食の先生」として会話や演劇、創作物、さまざまな体験学習を通じ、子どもたちに日本食文化や礼節・歴史を伝える給食サービス。考食師のこれらの活動は、一般的な給食サービスの想像を大きく超えるサービスであり、同社の給食の採用が園自体の価値向上にも大きく寄与している。全国250カ所の幼稚園・保育園の子ども達の食育や安心食材を提供する農家も支える優れたサービスである。

 

優れたサービス人材に必要な要素

優れたサービスの体現を担う「考食師」の育成はどのように行われているのでしょうか。考食師の役割として重要なのは、おいしい給食を作ることもさることながら、「引き出す食育」を実現することで、サービスの価値を高めています。この「引き出す食育」とは、子どもの感性や生きる力を引き出すような食育を意味します。つまり考食師に必要なのは、食の知識や調理スキル以上に、日本の食文化や価値観を理解したうえで子どもたちの関心や気づき、感性を「引き出す力」ということになります。

たとえば考食師が大切にしているのは、「教える」ことではなく、「一緒にやってみる」ことだといいます。一緒にやってみるという共創型のスタンスで関わることで、コミュニケーションを通して子どもたちの気持ちの変化をとらえる共感性に重きをおいているのです。


成果とプロセスに分けて考える

今回の事例は、お客様がサービスの何を評価しているのかを分解してみると、理解を深めることができます。当連載の第5回「サービスの評価を分解する~なぜサービスの成果を高めてもCSは向上しないのか~」でも取り上げましたが、お客様のサービスに対する評価は、「成果に対する評価」と「プロセスに対する評価」に分解することができます。

 

一般的に、サービスの評価を高めるための取り組みや人材育成は、「成果」を高めることに着目されてきました。ミスなくスピーディーにサービスを提供するための業務スキルや専門知識の習得。コストパフォーマンス良く対応するためのしくみ化といった具合です。対して「プロセス」の評価を高めるための取り組みはといえば、個人任せになってしまっていることが多々あります。「プロセス」の評価を高めるための組織的な取り組みや人材育成が、サービス向上の伸びしろだと捉えることができます。

これまでの給食サービスは、調理師がつくった給食を提供するという、「成果」に重きを置いたサービスが中心でした。対してミールケアは、考食師が子どもたちとの関わり合いを通して引き出す食育を行うといった「プロセス」に重きを置いたサービスだと言えます。

このように、ミールケアでは、「引き出す食育」を自分たちのサービスの本業と定義し、それを担う人材を「考食師」と名付けて、「サービスのプロセスの評価」に重きを置いた人材育成を行っていました。自分たちが提供するサービスの「本業」とはいったい何なのか、サービス人材が大切にするべきことは何かを明らかにしたうえで、サービスのプロセスで価値を発揮できる人材の育成方法を見直してみることも、優れたサービスの実現に向けて有効な一手になるのではないでしょうか。
 

※「子どもたちに食文化を伝える『考食師』による給食サービス」の受賞事例はこちら

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<筆者プロフィール>
  


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120654

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/