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【連載】CS向上を科学する

2018年11月19日

【CS向上を科学する:第67回】サービス開発の着想力(1/2)~そのサービス、なぜ気付けたのか?~

 




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


 
以前、東京会議所が主催する講演会にて、第1回日本サービス大賞の優秀賞を受賞したクリーニング会社の喜久屋の中畠社長と一緒に登壇させて頂きました。中畠社長は、喜久屋のサービスについて基調講演され、私は事例解説として、その事例をサービス科学でひも解くことで、業界の枠を越えて活かせるポイントをあぶり出すためのお話しをさせて頂きました。その際の対談の中で、「その新サービスになぜ気付けたのか?」と伺ったところ、その回答が実に興味深かったので、この場を借りてご紹介したいと思います。そこには、サービス開発の着想力を磨くヒントがありました。
 

第1回日本サービス大賞 優秀賞
宅配クリーニング「リアクア」
(株式会社喜久屋)

 出典:第1回日本サービス大賞
 

右肩下がりのクリーニング業界のサービスイノベーター 喜久屋

クリーニングといえば、市場規模が年々縮小する苦しい業界のひとつです。この右肩下がりの業界において、安売り競争から抜け出して、サービスの品質保証、衣類の無料保管、全国宅配ネット「リアクア」など新たなサービスを生み出し、いまやバンコクにも進出して、成長し続けているのが喜久屋です。

この喜久屋が急成長するきっかけになったのは、トヨタ生産方式を取り入れてクリーニング業務の平準化に成功したことです。クリーニングの需要は季節や曜日など様々な要因で大きく変動します。しかも、業界全体で仕上がりスピードの競争が激化しているため、クリーニング作業の時間に余裕はありません。「業務の平準化」といっても、簡単ではないのです。


スピード競争の中で、どうやって業務を平準化したのか

答えはとてもシンプルです。納期を顧客に決めてもらうことにしたのです。そして、希望納期に合わせて業務を平準化して、最適で高品質なクリーニングを実現したというわけです。衣類の無料保管サービスも同様の発想から生まれました。

言われてみれば当然ですが、顧客の衣服の中には、もちろん急いで仕上げてほしい衣服もありますが、一方で急がなくても良い衣服もあります。さらには、急がない方が喜ばれる衣服だってあります。たとえば冬服を春になってクリーニングに出す場合、次必要になるのは秋なので、手元に戻るのは半年後でも良いわけです。このように、顧客が期待する納期は、顧客や衣服によってそれぞれ異なります。実際に顧客に納期を決めてもらったところ、翌日の希望が2割、2日後が2割、3日後も2割、次の土曜日が2割、さらには「いつでもいい」が2割だったそうです。

それにもかかわらず、現状のクリーニングサービスの多くは、「スピード仕上げこそ価値がある」というクリーニング会社の思い込みで、勝手に決めた納期を顧客に押し付けているというわけです。さらに悪いことに、スピード仕上げにこだわることで、現場は疲弊し、品質が低下し、顧客が離れ、安売り競争が加速する。そんな負のスパイラルに陥っているのです。

これまでご紹介してきたサービスの本質である「事前期待」を捉えることが、いかに重要かが実感できる事例だと思います。しかし、スピード仕上げと安売り競争が激化する競争環境において、「顧客に納期を決めてもらう」というとてもシンプルで本質的なポイントに気付くことは簡単ではないと思います。

そこで聞いてみました。なぜ、それに気付けたのでしょうか。 (次回に続きます。)

 

※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~

 

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<筆者プロフィール>
      


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120654

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
   http://www.service-kaikaku.jp/