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SPRING幹事より

2013年11月26日

ジェイティービーグループ本社代表取締役会長 佐々木 隆 氏

 ~地域を活性化させるインバウンドの推進を~

 

目下、日本社会の最重要課題は「経済の活性化」である。安倍晋三内閣が決定した成長戦略では、“観光立国”の実現が謳われ、2030年までに訪日外国人旅行者を年間3000万人超に増やすという政府目標が盛り込まれている。

そもそもなぜ、観光が地域の活性化に結びつくのか。それは、観光が新たなものを投資して創るという考え方に基づくものではなく、既存の、今あるものを工夫して見せるという性質によるものだからである。特に今、地方は疲弊し、このままいけば底知れない状況に陥るのではないかという危機感がある。そこで、お金よりもむしろ知恵を出すことで、地域の魅力を高められるのではないか、賑わいを取り戻せるのではないかと、観光に対する期待が高まっている。

国民の意識も、ここ10年ほどで大きく変貌している。以前はインバウンドの重要性など歯牙にもかけられなかったが、今や、地域の活性化とインバウンドは表裏一体のものであり、国内外の交流人口が拡大すれば、日本も活性化する。たとえば、相手国に500万人行き、向こうからも500万人来日する。それがいわゆる2国間相互の交流のあり方であり、安全保障であり、国を開くということに直結しているのだという意識が、日本社会全体に浸透しつつある。

我々自身、そういう社会の大きな変化を踏まえ、2006年に組織変革を行い、分社化を進め、事業ドメインを旧来の「総合旅行業」から「交流文化事業」に転換してきた。これまで旅行会社というのは、どちらかというと、地域のことは地域に任せて、そこで出来上がったものを販売するという仕組みで成り立ってきた。しかし、やはりその地域地域が元気でなければ、元も子もない。47都道府県の支店が中心となって、地域と連携し、まちづくり事業や地域プロデューサー型人材育成等に携わるといった着地を起点とした「地域交流ビジネス」にグループを挙げて注力している。社員も、分社化によって、地域のニーズを真摯に受けとめる土台ができ、地域との距離感が縮まる中で、徐々に「交流」「文化」という意味が腹落ちするようになってきた。

さらに、見せ方一つ、工夫一つで、見える景色が違ってくる背景には、旅行者の嗜好変化も大きい。社会が成熟するのに伴い、「とにかくできるだけたくさん観光地を巡りたい」というニーズから、一つの場所に留まったり、自分の好みの時間の使い方を重視したりするようになるなど、旅行に求める価値も多様化し、変化してくる。これは、定住人口が減少する中、地域にとってはちょっとした“チャンス”でもある。

旅行の3本柱である「見る、食べる、遊ぶ」の末尾を取った「るるぶ」という情報誌がある。今の観光旅行でも「見る、食べる、遊ぶ」が3本柱であることに変わりはないが、昨今は、それらに加えて「(地域の人と)交流する、何かを経験・体験する、深く学ぶ」という新しい「るるぶ」が求められるようになってきた。そういう新たなニーズをしっかり押さえて、もう一度地域の宝を磨き直し、エリア外から集客できるような仕組みを構築していけば、各地域も身の丈にあった経済の維持ができるのではないか。

それでは、今後、インバウンドを推進していくために必要なことは何か。一つは、“目線”を正すことである。なぜ来日したのか。時折、日本人の予想を裏切るような外国人旅行者の回答に面食らうことがあるが、もう一度それを徹底的に調べてみること。我々は得てして、海外人材を登用したり彼らの意見に素直に耳を傾けたりすることが苦手で、内向きの論理から脱却するのが難しいが、意外に日本人が気づかない日本の魅力がわかるのではないか。これからは、日本人のフィルターを通して判断するのではなく、外国人の視点を通じて浮かび上がってきた生の情報を正しく分析したり発信したりすることが大切である。また、地域の特徴を生かし、その特徴に合ったお客様をしっかりターゲティングをし、戦略的にPRを行ったり、自らの足を使う営業部隊を編成し、積極的に誘客したりすること等も不可欠だろう。

2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催も決まった。草の根レベルの、地域住民による国際文化交流については、かつて2002年のW杯日韓大会で、5日遅れで未明に到着した選手を300人の村民で出迎えた大分県中津江村の例からも、日本人は潜在的におもてなしの精神が根付いていると確信している。オリンピックの開催をインバウンド推進の一つの起爆剤として前向きに捉えて、一歩一歩前進していくことが重要ではないだろうか。

 

佐々木 隆 氏(サービス産業生産性協議会代表幹事)・談

生産性新聞2013年10月5日号「サービスイノベーション~今後の展望~」掲載