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リーダーの声

2013年12月24日

ピュア・サポートグループ代表/株式会社おとなの学校代表取締役 大浦 敬子 氏

 「株式会社おとなの学校が進める、人づくり、組織づくり」

(2013 次世代経営人材セミナー 講義録より)

皆さん、こんにちは。大浦敬子です。私は熊本市に拠点を置くピュア・サポートグループの代表として、病院・介護老人保健施設・在宅サービス・高齢者住宅・コミュニティ・ケア等の経営をしています。現在51歳になり、4人の子持ちです。

ところで、突然の質問ですが。コーチングって、どう思いますか?・・・うちはそのやり方ではありません。それでついてくる若い子はいるのでしょうか?私は、極少な気がします。

 

現在の日本の介護の問題とは

さて、本題に入ります。今までの介護を振り返ってみましょう。認知症が進むと、高齢者はもう食べられなくなったら、どうしても口を開けない、という時期がやってきます。認知症というのは、最後に目の前にあるものがわからないという状態です。そうすると、どんなに頑張っても口は開きません。そこで、多くの日本の施設がやってしまうのが「胃に穴をあける行為」です。皆さん方のご家族様でも同様のことをなさってしまった方、いらっしゃるのではないでしょうか。一回あけた穴は、そう簡単には閉じません。ちなみに、日本では閉じませんが、海外ではほとんどの人が閉じます。閉じられる人にしか、胃に穴を空けないからです。日本の医療はある意味で進んでいます。けれども、ある意味でとても遅れています。

介護というのは、とかく重労働です。北欧は介護が進んでいると思っている方も多いでしょう。あちらでは、介護のための機械がかなり導入されていると思ってください。私はそれをダメとは思いませんが、いかがなものかなあと思います。そして、きれいにおむつ交換して、褥瘡ができなければ、完璧な介護なのでしょうか・・・今の介護というのはそういう状態です。

ところで皆さん、西水美恵子さん(元世界銀行副総裁、現在ソフィアバンク・パートナー)をご存じですよね?この方の著書で一番有名なのは多分「国をつくるという仕事」でしょう。著書の中で最初に始まるのは「極貧の中の生活」。彼女がやったことは、世界銀行のスタッフに一番極貧の家庭に行かせて一定期間一緒に過ごさせるというプログラムをつくったことです。まずは彼女自らが行くわけです。そこで、極貧生活中のお母さんが語った言葉をたくさんの人に伝えています。「This is not a life but just a body alive.」「これは生きているってことじゃないの、ただ体を生かしているだけ」。さあ、みなさん、日本で行われている「最高の介護」は、まるでこのことじゃありませんか?ただ、体を生かしているだけじゃないか・・・。私は、自分が介護という仕事を始めるに当たって、自分が介護を受ける立場だったら、そんな事(体を生かしているだけ)は嫌だと思いました。

 

経営者として「介護」に注ぐ思い

私は、大学院に行き、医者の免許と博士号を取りました。32歳の時に経営をやっていた母親が亡くなったので、引き継ぐことになりました。そのとき私は、恐ろしいものを見ました。高齢者を寝かせていれば儲かるという病院です。怖かったですね・・・。こんなのは嫌だと思いました。そして儲かるのはものすごく嫌なことだと思いました。18年前のその時に私は、「ああ、この国は確実につぶれる」と悲観しました。未だに国債漬けになって生きながらえていますが、この国の実態は死んでいると・・・。医療・介護で働いている私のお給料は、9割近くが国家から支払われているということになります。計算した人の話で聞くと、私の給料は3分の1くらいが国債から支払われているということになるそうです。経営者としてモチベーションは下がりました。ですから、これから介護をやる方には、国全体のことを真剣に考えてほしいと思います。

私が経営者として知名度が上がったのは、おとなの学校を始めたからではありません。「こんなものいらいない」と、高齢者を寝かせていれば儲かる病院をどんどんやめていったことがきっかけです。ただ、つぶしていくのではなく、小さい病院にして、リハビリテーションと緩和ケア(ホスピス)だけ残して、生き残りました。あとは全部介護の仕事や住宅の仕事に変えていきました。なぜか。私は半年以上病院に入院することが、決して幸せではないと思うからです。高齢者の施設でもそうです。今でいう「最高の介護」をされて本当に幸せなのでしょうか?そこで、いろいろ考えた上で、「介護をしない介護」を目指すことになりました。

皆さん、17才の頃を思い浮かべてください。放課後の校庭を眺めている自分に戻ってください。どうですか?実は17才に戻ったかどうかは顔を見ればわかります。実際17才だった時の見た目と今のあなたは違いますよね。だけど、17歳のあなたも今のあなたも一緒ですよね?これを自己の継続性といいます。ということは、80歳で認知症、半身不随になっても、あなたはあなたなのです。さあ、先ほど私が伝えた「最高の介護」で、あなたはいいと思いますか?

 

「おとなの学校」をつくることになったきっかけは

ある勉強会で公文の学習療法に出会いました。そこで、「高齢者は遊ぶ(療法)のではなくて、学びたいのではないか?」と思いつきました。みなさんも一生懸命働いた後に、今こうやって勉強しに来ていますよね。実は人間というのは、すごく勉強好きなんですよ。学ぶこと、新しいことを知るのが大好き、これは本能だと思います。動物としても「エサがたくさんとれる」ということで、息ができる可能性がどんどん長くなるということですから、学ぶことが好きな遺伝子が残るようになっているのです。そこで、私は学校をつくることにしました。

今はフランチャイズ化しデイサービスを提供しています。制服、校章、校歌、スクールバスがあります。高齢者は学校だから自分でがんばろうとします。スタッフは先生役だからプライドが持てます。成果発表会もします。通知表も「甲乙丙丁」で全甲を全員にお渡しします。90才で生まれてはじめて全甲の通知表をもらう人がいるのです。(写真を見せて)いい顔をしているでしょう!実は、今の高齢者のケアに、ひょっとしたら仕事の中に抜けているのは、これなのではないでしょうか。本当に高齢者自身ががんばっている姿を見たら、若い子だってがんばらなきゃと思うでしょう。大型施設でケアさせていただいている中には、かなりの重介護の方もいます。その方にマンツーマンで「お勉強」というケアをしました。すると「○○様、わかりましたよ、今『はい』っておっしゃいましたね!」とスタッフが言いました。そう、しゃべれるようになったのです。その方は頑張るようになって、寝た状態で勉強するようになりました。そして家族が家に連れて帰れるようにもなり、ご家族様が「はじめて家でおむつ交換もできるようになった」とものすごく嬉しそうにされていました。自分の親を介護できるという家族の満足感も得られたのです。その方は、最後に亡くなられる当日まで、勉強していました・・・。 

皆さんの中には、学校嫌いだった人いるかもしれません。でも、本当に人生の最後に戻る場所としては、学校はかなりのパーセンテージで喜ばれる場所です。先ほど17才に戻ってもらいました。あの頃に戻るのは、さほど大変ではなかったでしょう。人の心は自由なのです。でも、皆が「自分は何歳でこういう身で・・・」と自分で自分を囚われの身にしているだけです。17才に戻ると、心が動くでしょう。そうすると、体は後からついてきます。たとえば、こんな話があります。要介護2の何事にも興味を示さないHさんにおとなの学校での学習療法を受けてもらいました。数字を読む初歩的なものや簡単な計算をさせて3週間後、なんとHさんが本を読むようになりました。別人のようになりました。足し算の問題もスラスラ解くようになり、認知症の状態は、改善の兆しがみられることが分かりました。さらに、家族が来ると一人で歩きました。その変化にびっくりしてご家族様の様子に、Hさんが笑顔を向けました。

このように、明らかによくなる人たちいます。皆学校が好きなんですね。学ぶことは本当に人をワクワクさせるのです。私たちは、入学したときに「おめでとう」を言い、卒業するとき(退所するとき)も、「おめでとう」といいます。そして、「介護してくれてありがとう」だけは言わせちゃダメだとスタッフに言っています。成果発表会でマイクを前にきちんと「ありがとう」と言ってもらえる、この循環こそ良いものなのです。そこで意欲が生まれて、心が動いて体が動く・・・そして周りが支える。学校とは、人間がうまく回るようにできているものなのですね。普通の施設では、自分より重介護の人が近くに寝ているとクレームがくることが多いと聞きます。でもおとなの学校ではそうなりません。なぜなら、「私が支えてあげなければ」と思うようになるからです。そして一番大事なものは、「未来」です。どんな施設でもそうです。「あなたが高齢者」だと思わせた瞬間、ダメになります。「自分に明日がある。明日もまた学校に行こう」と思えることがとても大事なのです。

 

介護をかっこいい仕事に!

私が今強くやりたいことを一つお話します。「介護をかっこいい仕事にしたい」のです。インドネシアやフィリピンの方を呼び寄せるというやり方もありますが、言葉の壁は高いです。やはり日本の中で介護という仕事の社会的価値・認知度を高めて、介護者の賃金も高めたい、それにはまずかっこいいと思われることが先決だと思っています。うちでは、若いスタッフのことを、エヴァンジェリスト(伝道師)と言っています。経産省がやっている「クール・ジャパン」ですよ(笑)。日本のかっこよさを世界に伝えようということです。 

スタッフたちには、宴会芸で1位をとったら5万円をあげることにしているのですが、1位をとった彼らがやったのは、「70年後のおとなの学校」でした。学校で若いころに流行ったK-POPを流したら背中がシャキンとして、音楽が終わったらしょぼんとなる、よくできた芸でした。経営理念そのものを表現していました。入社して何年も経たないと経営理念が浸透しないということは決してありません。若い子ほど、よく入るのです。この子たちがやる授業は、とても楽しいのです。「全身全霊全力研修」というものもやっています。自己啓発セミナーで死ぬほど声を出す系のものですが、息が止まるまでやるのです。一泊二日でこれをやると、人間は軽く変わります。そんな難しいことではありません。これをやりはじめてから、うちの法人は本当に元気になりました。世界中の人をおとなの学校で元気にしたい、世界中をエバンジェリストでいっぱいにしたいと思います。 

北欧の介護を日本に導入することは、日本人には合いません。向こうは徹底的に自立させます。自立できないということがアウトなのです。ですから、基本的に短い介護。みなさんぜひ見にいってください。そうでなければあれだけ税金をとって持続させることが不可能なのです。では、日本はどれくらい無理をしているのでしょうか?しかし、おとなの学校については、絶対の自信をもっています。私の夢は、いつかボストンに行って、サンデル教授に授業をやってもらうか受けてもらうかです。でも彼は頭がしっかりしているからボケないかもしれませんね(笑)。

 

愛を基礎とする経営で、人を育てる

少なくとも、今ある介護で、世の中がうまくいくとは、私は思いません。皆さんも、今の介護を受けたいですか?いやだったら、自分が今から変えなければなりません。先日、伊那食品工業さんを訪問し、勉強してよかったと思ったのは、「愛を基礎として経営」されていたことです。コーチングして、目標を立てて、売り上げを立てて、是だとする時代は終わったと思います。今までの経営目標はある意味恐怖を与えています。「売り上げが上がらなかったらどうしよう」と。要は原因と結果の法則のことです。原因がないとことに結果は生まれません。ということは、原因にもれなく恐怖がついてくるという経営をすると、結果にもれなく恐怖がついてくるというわけです。たとえ表面上うまくいっても。恐怖を利用している限り、最終的に誰も幸せにはなりません。先に申し上げたとおり「人の心は自由」ですが、必ず皆自分自身を「囚われの身」にしてしまいます。「自分はこういう学歴で、会社でこういう立場で・・・だからがんばらなきゃいけない」と。いいですよ、そうし続けても。でもいつか終わる時がきます。

おとなの学校をつくるときは、ディズニーランドを調べ倒しました。サービス産業をやりたいのなら、まずディズニーを調べて真似してはいかがでしょうか。高い確率でうまくいくと思います。されども、ディズニーランドに実際行くと、子供をしかっている母親がいっぱいいますよね(笑)。私は、この人たちを幸せにしたいと思うのです。今の私だったら、子供がどんなことをしても怒りませんよ。それは私が恐怖から解放されたからです。要は、皆が幸せになれないと私が幸せになれないということに気づいたのです。愛とは、行動なのです。たとえば、「お掃除」は自分がたとえその場からいなくなったとしても、自分の愛がその場に残るという行為なのです。

18年前にこの国は怖いと思った、つぶれると思ったと言いましたが、それからどうやって生き残るかということを延々と考えてきました。間に合ったと思ったことがたった一つだけありました。それは、「仲間づくり」です。うちの子たちの中には、何があっても仲間を裏切らないという人が沢山います。若い男の子です。育てました。簡単にいくと思わないでください。だけど、育てました・・・。

 

皆を元気にする組織づくりとは

最後に、皆を元気する組織づくりについてお伝えしましょう。その秘訣は・・・「私なんかいらない」(笑)。フランチャイズもお陰様で好展開しており、今年後半には拡大、お客様が何人来ても受け入れられるようにと取り組んでいます。私はこんなタイプだから「カリスマ的」など言われることもありますが、そんなものは組織にはいらないんですよ。強いリーダーは必要ありません。大企業は別として、中小企業でこれから生き残る組織があるとしたら、弱い人たちの中からそれなりに全員がリーダーとして動ける組織だと思います。

なぜでしょうか。若い子たちがお金で動くと思いますか?目標設定だけで動くと思いますか?そんなことは大企業でもうまくいかないと思います。若い彼らのところに目線を落として、本当に彼らが望んでいるものは何か、見てあげてください。「生きがい」という言葉は少し違うかもしれませんが・・・、彼らが毎日楽しくて、仲間と楽しく過ごしてイキイキとしていている状態をつくってあげてください。この方法論を確立することができるでしょうか。私はできると信じています。

「Where there is the will, there is a way.(精神一到何事か成らざらん)」

私の仕事がどうなっていくかは、私自身がどれだけその仕事(スタッフ・お客様・社会)に愛情を注ぎ、生きていくことかにかかっていると思うのです。

ご清聴、ありがとうございました。

(以上)

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大浦 敬子 氏・談

(2013年9月24日 SPRINGフォーラム 次世代経営人材育成セミナー 講義ダイジェスト)

 

「おとなの学校」詳細は、公式HPをご覧ください↓

http://www.otona-gakkou.com/