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【連載】サービス産業の業務仕組み化

2022年8月5日

【第5回】業務基準書作成は急がば回れ。いきなりパソコンで作り始めない 前編

 

業務基準書作成は急がば回れ。いきなりパソコンで作り始めない
 
前回 は「業務基準書作成の流れと優先順位づけ」についてお伝えしました。今回は「業務基準書の骨格作り」についてお伝えしていきます。
 
見える化が業務の問題点を洗い出す
 通常、業務基準書(マニュアル)を作成するというと、頭の中にある作業の手順をパソコンできれいにまとめることを想像されると思いますが、初めに行うことは骨格(下書き)の作成です。骨格とは、業務基準書のポイントを抜き出したものです。業務を作業レベルに分解し、洗い出していくのです。
 骨格を作ってから業務基準書を作成するとなると、手間と時間がかかる と思いがちですが、イメージとは逆に業務基準書の作成スピードは速くなります。いきなりパソコンで作成していくのは、一見進んでいるように感じますが、何を書くかがまとまっていないと、作成しては修正するという形になり、行ったり来たりして時間がかかっていることが多いのです。しかし、骨格を作ってからパソコン作業に入ると、あとは文章化するだけなので比較的短時間で済みます。考えながら作成するのではなく、考えることと作成することを分けることで、作成時間は短縮化されるのです。
また業務の問題点が明確になるというメリットもあります。作業手順やポイントを書き出すと、ムダな作業に気づいたり、人によって作業のやり方が異なることに気づいたりします。特に小売・サービス業の場合、人によって作業のやり方が異なることが多いので、骨格を作成した時点で共有し、作業のやり方を統一しておくことが重要です。ここで統一しておかないと、業務基準書を現場に配布したあとに修正の依頼が来たり、記載されているやり方では現場は回らないなどの意見が届いたりするのです。業務の問題点や事前の合意形成を図るうえで、骨格を作成することが重要なのです。
 ある企業では骨格を作った段階で、店舗ごとに業務のやり方が全く異なっていることが判明しました。また議論を通じて、生産性の違いは作業のやり方の違いに起因することが分かりました。その企業では、生産性の高い店舗と低い店舗の骨格を比較することで、作業の流れの違いを見える化し、よりよい作業の流れを作っていきました。 これまでは本部が作成したマニュアルを一方的に配布していたため、現場の反発が強かったとのことですが、骨格の段階で時間をかけて議論することで、現場が自分事としてとらえるようになり、浸透しやすくなったといいます。
 
業務を見える化するSOA
 サービス産業生産性協議会では、骨格を作る道具としてSOA(サービス・オペレーション・アナリシス)というフレームワークを開発し、活用しています。(図表.2)このフレームワークを使うと、業務基準書に必要な情報を漏れなく洗い出すことができ、業務内容や作業の流れを議論しやすくなります。
 

図表.1 SOAのフォーマット

 
SOAは「業務・作業の定義」「基準」「資源」の3つに大別されています。
「業務・作業の定義」では、対象となる業務の範囲や内容を明確にしています。小売・サービス業では人の流動性が高く、同業他社から入社した従業員も珍しくありません。そのため、業務名と内容が人によって異なったりすることを防ぐため、業務・作業を定義するのです。
「基準」は、行動基準・時間基準・場所基準・達成基準の4つから構成されています。行動基準は、なぜその業務や作業を行うのかという理由です。理由を明確にすることで、業務のやり方や優先順位は変わります。たとえば、同じレジ業務でも、顧客を待たせないレジ業務とファンを作るレジ業務では、作業の手順が異なります。時間基準は、いつまでに行うのかという期限もしくは作業時間について明記します。これは守らなければならない時間というよりは、目安という位置づけです。目安がないと、人によって大きく作業時間が異なってしまうからです。場所基準は行う場所です。ほとんどの場合、行う場所は暗黙のうちに決まっていますが、改めて見直すことで、歩行のムダが減るなど、生産性が高まることがあります。達成基準は、どこまでいったらその業務や作業が終わりかを示すものです。小売・サービス業はこだわろうと思えばどこまでも作業を続けることができ、手を抜こうと思えばとことん手を抜けます。そのため、達成基準を設定し、業務のできばえに差が出ないようにすることが大切なのです。
「資源」は、人とツール・設備の明確化です。現場を訪問すると、店長がアルバイトと同じ業務をしているということがあります。本来、誰が行うべきなのかを定め、役割と責任を明確にします。仕事に使うツールについても明確にし、ツールがないために作業時間が増えることがないようにします。ある企業では、目先のコスト削減でツールが十分にいきわたらなかったことから、作業時間が余計にかかり、逆にコストアップになっていることもありました。