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【連載】サービス産業の業務仕組み化

2022年6月3日

【第1回】業務基準書(マニュアル)が企業の業績を変える 前編

 

業務基準書(マニュアル)が企業の業績を変える
 
業務基準書とは
 業務基準書とは仕事の目的や手順が書いてある文書のことです。一般的にはマニュアルと呼ばれています。しかし、業務基準書と名付けたのは、仕事の目的を明確にしたうえで、現場目線で作成することを徹底して行う点が、一般的なマニュアルとは異なると考えたからです。
 一般的なマニュアルは本社部門や上司、仕事のできる人が、あるべき(理想の)姿をもとに「こうあるべき」「これを守りなさい」という形で現場に展開されます。そのため、現場の通常業務とはかけ離れた手順となっていたり、やらされ感につながったりします。しかし「マニュアルは現場の生産性を上げるもの」という位置づけを明確にして、現場視点でマニュアルを作成すると、現場のやる気は上がり、生産性が上がるのです。その違いを明確にするために、私たちの作るマニュアルには「業務基準書」と名付けました。
 業務基準書は、無印良品が店舗で活用しているMUJIGRAMをベースに、大手の小売業やサービス業のマニュアルの調査結果を参考にして、サービス生産性協議会が開発しました。汎用的で、現場で使いやすく、誰でも比較的簡単に業務基準書を作れるツールを目標とし、無印良品からの出向者や大学教授、コンサルタントが知恵を出し合いました。
業務基準書のベースとなっているMUJIGRAMとは、無印良品が店舗で使用しているマニュアルのことです。そこには挨拶の仕方や陳列の仕方など、店舗に関わる仕事が事細かに書かれています。これを教科書に、新しい社員やアルバイトを教育し、どの店舗でも同じつくりで同じサービスが受けられることで、顧客が一定のイメージを持つことができ、ブランド力向上に役立っています。さらには店舗ごとに作業のやり方が統一されているので生産性も上がります。
 無印良品は土着化をテーマに各地域に合った店づくりを行っていますが、MUJIGRAMにより店舗の仕事が標準化されているからこそ、生産性を下げずに新しい取組にチャレンジできるのです。
 
 
 
 
MUJIGRAMが他の会社のマニュアルと異なる理由
私も多くの会社で業務改善やマニュアル作成の支援をしてきましたが、MUJIGRAMが他の企業のマニュアルと異なるのは、現場視点・仕事の目的・徹底した運用 にあると分析しています。
 
(1)現場視点
現場視点というのは、現場が使いやすいように、現場の作業の流れに沿って作られているということです。たとえば、レジ業務であれば、お客様への挨拶から始まり、会計、見送りまでの流れが一つのMUJIGRAMに書かれています。企業によっては、現金の取扱いは経理部門、レジの扱いは店舗オペレーション、挨拶は サービス部門など、レジ作業を一つするのに様々なマニュアルを見ないとわからないということもあります。
また企業によっては、書かれている内容が現場では実行できないようなこともあり、そもそも問題が起こった際、本社や管理部門などの指示した人が、自分たちの言い訳のために作ったようなマニュアルもあります。現場の状況を踏まえ、実行可能かつ、より理想に近い仕事のやり方が書かれているのがMUJIGRAMなのです。
  
(2)仕事の目的
 MUJIGRAMには、仕事の目的「なぜ」が書かれています。仕事の目的が明記されていると、やらされ感が減り、改善のアイディアが増えます。目的が明確になると、自分の仕事にどのような意味があるのかを理解することができ、ただの単調な作業でないことを認識できます。そのため、モチベーションも高まるのです。また仕事の目的とは、仕事を行った結果として達成したい状況を示したものなので、目的が書かれていればマニュアルのやり方に固執することなく、目的に合致する、より良いアイディアが現場から出やすくなります。
 そして、仕事の目的を書くことによって、自然と企業理念に沿った仕事のやり方を考えるようになります。たとえば、レジ業務一つをとっても「丁寧なレジ応対」「早いレジ応対」「正確なレジ応対」など、様々な方向性があり、やり方はそれぞれ異なります。企業理念や戦略に沿って、レジ業務の目的を「また来たくなる」ことと設定すると、それに合ったレジのやり方になっていくのです。
 
(3)徹底した運用
 MUJIGRAMが現場で活用されて初めて生産性が上がり、業績向上につながります。そのため、MUJIGRAMは浸透や運用にも工夫がされています。
 まずMUJIGRAMが社内に根付いていなかった時期には「これはMUJIGRAMに書いてあるか」と繰り返し社長が質問を行ったそうです。さらに現場からMUJIGRAMの改訂要求があるにもかかわらず、それに対して担当者が対応をしていない場合、社長に連絡がいくような仕組みになっていました。
 いったん浸透した後は、人材育成のための教科書として活用するだけでなく、アルバイトの評価や店舗の監査などと関連性を持たせることで、MUJIGRAMが形骸化することがないような仕組みとなっています。そして、社長が交代してもMUJIGRAM自体は内容を常にブラッシュアップされながら使い続けられているのです。
経営陣や店舗オペレーションの責任者が変わるたびに、マニュアルが重視されたり軽んじられたり と方針がころころ変わり、そのたびに仕事のやり方も変わり、現場が混乱し、生産性が下がるのを目の当たりにしてきました。本来、方針が変わっても、現場の仕事のやり方が大きく変わることはないはずです。書かれている内容は別として、マニュアルを使うこと自体が良いか悪いかという議論ではなく、どう使うのかが重要です。理念や戦略を現場に具体的に伝えるツールとして、マニュアルを活用することで、企業の実行力が向上するのです。