【連載】CS向上を科学する【CS向上を科学する:第129回】新刊:事前期待 ~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~公開日:2025.10.14

松井サービスコンサルティング
代表/サービスサイエンティスト
松井 拓己

読者の皆さまにご報告があります。この度、当コラムで問いかけ続けてきたサービスとCSの本質である「事前期待」をテーマにして、一冊の書籍が完成いたしました。タイトルは、「事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~」です。これまで300を超える組織で、サービスやCSを科学し、そのステージアップをご一緒してきた経験を基に、実践的なステップで構成しています。また、基礎理論や実践フレームだけでなく、実際の実践企業の事例や、第4回日本サービス大賞の受賞事例など、30を超える事例も掲載しています。いつも愛読くださる皆さま、執筆にご協力いただいた皆さまに、心から感謝申し上げます。実は本書は、当コラムの読者の皆さまや、当方のセミナーやワークショップにご参加くださった方々から、実践をガイドする指南書が欲しいというお声を多数いただいており、その期待にお応えできればという思いを込めて執筆させて頂きました。本書が、皆さまの後押しになれば幸いです。

はじめに―概要―

企業が「顧客価値の向上」に取り組むのは当たり前になりました。しかし、「思うように成果が出ていない」「これまでのやり方に限界を感じている」という声も多く聞かれます。言い方を変えれば、「これまでのやり方」は十分成熟して成果は高止まりしていると言えます。この限界ラインの突破は、なぜ難しいのでしょうか?

その答えは、高い顧客価値を生む『得点型』の設計図がないからです。

顧客価値を高めるには、2つの問いを考えなければなりません。それは、「どんな事前期待に」「どうやって応えるのか」です。多くの企業はこれまで、「新しいサービスを開発しよう」とか「どんな対応をすべきか」と、"打ち手の設計"ばかりを検討してきました。しかし、肝心な問いである「顧客のどんな事前期待に」応えるのか、という"価値の設計"がほとんど議論されていません。つまり、本書のテーマである「事前期待」が欠けているのです。

ほんの一例ですが、たとえば以下のように。

  • 成功事例の再現性問題: 社内の成功事例を展開しても、「あの人にしかできない」とか「あの時は運が良かっただけ」と、なかなか再現できません。実は成功事例は、「何をやったら上手くいったのか」という"打ち手"だけを展開しても、顧客の事前期待を捉えていなければ空振りし、上手くいかないのです。成功事例を再現するには「どんな事前期待に」「どうやって応えるのか」というセットでの展開が必要です。
  • CXギラつき問題: CXに取り組む企業では、顧客の体験価値を高めるためのカスタマージャーニーマップを作っています。しかし実態は、「提供者の都合を押しつけるもの」になりがちです。提供者がやりたいことしか書かれていない、「ギラついたジャーニーマップ」が散見されます。体験価値を「体験」と「価値」に分解してみると、多くの場合、CXは「体験の設計」ばかりで、「価値の設計」がないことが原因です。
  • CS/NPSの高止まり問題: 顧客アンケートで「結果の評価」(満足したか、ミスはなかったか)を丁寧に聞いている一方で、肝心な「事前期待」を聞いていません。様々な事前期待の顧客をごちゃ混ぜにして分析しても、「早い・安い・うまい、が大事だ」といった当たり前の結論しか得られないでしょう。どういう事前期待の顧客が、どのような評価をしてくれたのか?事前期待を紐づけて分析し直して、過去最高評価を実現した事例も本書で取り上げています。

本書は、こうした現状の殻を破り、ビジネスの成長をドライブできるような、顧客価値の高い「サービス設計」に挑戦するためのガイドです。
本書は三部構成(全9章)で、読者の皆さまが段階的にアプローチを深めていけるよう設計されています。その出発点となるのが、長年かけて育ててきた価値を高いレベルで組織的に再現する「リ・プロデュース」です。これを、5段階ある事前期待へのアプローチの入口ーーすなわち「深度0」と位置づけています。(図1)
次回は本書の内容にもう少し踏み込んで「リ・プロデュース」に込めた「再現性」と「再設計」の考え方にも触れながら、核となる「事前期待による価値の設計図」の作り方や、そこからさらに価値を高める方法(事前期待へのアプローチ「深度1」)を紹介します。

図1:事前期待へのアプローチ深度0~4

松井氏執筆の新刊「事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~」の詳細はこちら

「事前期待」という顧客の目に見えない期待に光を当て、ビジネス価値を飛躍的に高める手法を体系化した実践書。300以上の事業支援経験をもとに、あらゆる業種で活用できる思考法とツールを体系化。属人的な対応から組織的な価値創出へ――変化の時代にこそ読んでおきたい一冊です。 

●著者:松井 拓己
●協力:サービス産業生産性協議会
●発行:生産性出版
●発売:2025年10月20日
●価格:2,640円(税込)

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松井氏が講師を務めるイベント情報

「サービスとCSの本質を科学する」セミナー
 ~リ・プロデュースとステージアップ~(1/27(火)開催)

サービスやCSを「リ・プロデュース」し、新たな価値を生み出しませんか?
これまで築き上げてきたサービス事業やCS活動をステージアップするために、シンプルな理論と手法を用いて、付加価値型のサービスをモデル化します。また、取り組みの道しるべとして、6つの壁(顧客不在、建前、闇雲、実行、継続、情熱の壁)についてもお話します。

▼セミナーの詳細・お申込みこちら

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【1日で学ぶ!5つのフレームワーク】
サービスサイエンス実践セミナー ~サービスとCSの本質を科学する~
(2/10(火)開催)

300社以上が活用する「サービスとCSの本質論と実践手法」を通じて、属人的な経験や場当たり的な手法に頼らず、どの企業でも再現性のあるサービスサイエンスを実践いただきます。サービスサイエンスの「5つのフレームワーク」を実際に活用しながら、自社のサービスビジネスや、CS・CXの伸びしろを見出していただきます。

▼セミナーの詳細・お申込みこちら

https://www.jpc-net.jp/seminar/detail/007313.html


<筆者プロフィール>

松井 拓己
(Takumi Matsui)  

松井サービスコンサルティング  
代表
サービス改革コンサルタント
サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか


▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/



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