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【連載】CS向上を科学する

2023年6月9日

【CS向上を科学する:第116回】市場創出型サービスイノベーションの着眼点とサービスモデル(1/2) ~新しいモノや体験の先行予約販売・応援購入マーケットプレイス「Makuake」~

 


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

 今回は、第4回日本サービス大賞・経済産業大臣賞を受賞したMakuakeを取り上げたいと思います。先日、埼玉県生産性本部のシンポジウムでご一緒させて頂いた際に、「日本のモノづくりの伸びしろ」、「サービスの価値共創のしくみへのこだわり」、「そもそもMakuakeのサービスモデルはクラウドファンディングと本質的にどこが違うのか」など、示唆に富んだお話をお聞かせ頂いたので、その一部をご紹介したいと思います。

Makuakeは、“アタラシイもの“(Makuakeでの言葉遣いです)の開発プロジェクト実行者(事業者)と、それを企画段階で応援購入する国内外のサポーター(購入者)をつなぐオンラインマーケットプレイスです。この応援購入によって、アタラシイものを作る前に売る仕組み「無在庫先行販売」を実現することで、新しいモノが次々に生まれる0次流通市場を創出しています。ここに多くの事業者、購入者だけでなく、世界各地のバイヤー、100を超える金融機関、メディアが参集して独自の経済圏を生み出しており、Makuakeはまさに、市場創出型のサービスイノベーションといえます。受賞事例の詳細はこちら

 

このサービスイノベーションの凄みとは

まずこのサービスイノベーションの何がすごいのかというと、アタラシイものを生み出すプロセスそのものを革新している点です。従来の新商品開発は「企画」をしたら、「在庫」を作って「販売」を開始するというプロセスで進んでいきます。ここでの最大の問題は、アタラシイものを世に出そうと思ったら、まず事業者がモノを作って在庫するというリスクを負う必要があるという点です。日本には消費者が満足するレベルのモノづくりができる事業者がたくさんいるのに、なぜ日本から魅力的な新商品があまり生み出されていないのか。その原因のひとつは、アタラシイものを企画しても、スケールすること(ある程度の規模で売れること)が求められてしまうため、多くの企画がお蔵入りしてしまうことです。そこで、このお蔵入りしているアタラシイものを市場に生み出すために生まれたのが、「作る前に売る」つまり、アタラシイものを「企画」したら、“応援購入”という形で「販売」して、売れた分を「在庫」して顧客へ届けるというサービスモデルなのです。「企画⇒在庫⇒販売」から、「企画⇒販売⇒在庫」へとプロセスを逆転し、在庫リスクなくアタラシイものを生み出すことを可能にしたサービスイノベーションなのです。


クラウドファンディングとの本質的な違いを考える

「ところで、Makuakeはクラウドファンディングと何が違うのか?」と、
Makuakeについて紹介させていただくと、よく質問されますので、読者の皆さんも関心があるのではないでしょうか。実はMakuakeの進化のストーリーをひも解くと、クラウドファンディングとの本質的な違いを明確にし、サービスモデルとして構築・強化することが、事業成長のブレイクポイントになったとも言えます。その違いについてMakuakeでは、「クラウドファンディングは資金調達の場」、対して「MakuakeはECマーケティングの場」と表現されています。もちろん
Makuakeは資金調達の場でもあるのですが、このサービスモデルの本質的な価値は、資金調達というよりも、アタラシイものを生み出す前のテストマーケティングの場の実現にあるということではないかと思います。もっと言えば、単なるテストマーケティングではなく、企画や事業者のストーリーを発信して、応援購入してもらうという「価値共創型のプロセス」を通して、アタラシイものを生み出す前にファンになってもらうための場。アタラシイものを生み出す前に、その事業の成長力の基盤を構築する場。これは、資金を調達すること以上に、アタラシイもの事業の成功確率と成長速度を高めてくれるはずです。この本質的な違いがあるからこそ、0次流通つまりアタラシイものが次々に生み出される市場の創出を成し得ているのではないでしょうか。

 

このように、市場創出型サービスイノベーションを実現しているMakuakeですが、次回はサービスとしての価値についてサービスデザインの観点からひも解きたいと思います。また、価値共創を実現するためのしくみにも注目してみたいと思います。

 
 

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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/