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【連載】CS向上を科学する

2023年3月14日

【CS向上を科学する:第113回】価値を革新するプロセス型サービスモデル ~住友生命保険相互会社 保険の概念を超えて新たな価値を生み出す“ 住友生命「Vitality」“(第4回日本サービス大賞 審査員特別賞・優秀賞)~

 


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

健康増進型保険“住友生命「Vitality」”は、保険の概念を「リスクに備える」だけでなく、病気などの「リスク自体を減らすために行動変容を促すもの」へと変革するサービスです。従来の生命保険にプラスして健康プログラムに加入することで、日々の運動や健康診断などの健康増進活動をポイント評価し、獲得ポイントに応じて「保険料の変動」や「特典(リワード)」が得られます。
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このサービスが興味深いのは、健康プログラムに加入すると健康増進活動の程度に応じて保険料が変動する点です。1年目は割引率15%からスタートし、2年目以降の保険料は健康増進活動によって獲得したポイントに応じて4つのステータスに分けられます。最上位ステータスのゴールドだと保険料はさらに2%の割引。逆に最下位のブルーだと、なんと保険料は2%の「割増」になるのです。(保険料は、割引率の上限30%、割増率の上限10%の範囲で変動)

ただし、年に1度の保険料の変動だけで、日々の健康増進活動への努力を続けることは難しいですよね。そこで保険料の変動のしくみの上に、もうひとつのしくみ「アクティブチャレンジ」を乗せています。アクティブチャレンジでは運動ポイント目標が毎週設定され、それを達成すると各種ドリンク等と交換できるチケットが必ず当たるルーレットを回すことができます。毎週の目標設定と達成特典のしくみを設けることで、楽しみながら日々の健康増進アクションを習慣化できるサービスモデルになっているのです。

 

顧客の行動変容をサポートするプロセス型サービスモデル

サービスモデルの観点で従来の保険の概念を変えたといえるのは、成果型サービスからプロセス型サービスへ変革した点です。成果型サービスでは、他社にはない商品や機能の開発、割引やキャンペーンなどで差別化するアプローチが代表的です。しかし近年は、新たな商品や機能を開発しても他社にすぐに真似をされてしまい、どこも同じようなサービスが並んでいるという業界は意外と多いものです。保険業界も、メニューや内容は各社で違いはあるものの、顧客にしてみれば大した差がないように見えてしまっているかもしれません。加えて、成果型サービスは、売り切り(売りっぱなし)になってしまうことも多いです。保険であれば、契約後は平穏無事に生活していれば保険サービスを利用することや意識することは皆無に近いということです。

プロセス型サービスモデルである「Vitality」は、保険に入ってからが健康増進活動のスタートとなり、目標の設定や特典(リワード)の提供、「Vitality」ユーザー同士のコミュニティの形成など、「価値共創」の関わりが続いていきます。これは保険のメニューや機能で差別化するのではなく、顧客の行動をサポートするプロセス型のサービスモデルであると言えます。

多くの企業のサービスは「成果型」のサービスモデルになっていて、価格競争から脱却できず苦戦しています。プロセス型サービスモデルへの変革のために、顧客側のプロセスの全体像を捉え、どのプロセスで顧客の行動をサポートできるのかを考えてみると良いでしょう。

 

結果、諦めている事前期待に応えるサービスに価値を革新

保険に加入するとき「将来の不安やリスクに備えたい」というのが多くの方の事前期待です。保険を検討する過程で、自分のためにも家族のためにも「できるだけ元気でいたい」「もっと健康になりたい」と思うことはあっても、それを保険サービスに期待することは、顧客自身が諦めているのではと思います。この「諦めている事前期待」に応えられるサービスを実現したのが、健康増進型保険“住友生命「Vitality」”というわけです。当連載で取り上げてきた通り、サービスの価値は、どのような事前期待に応えるかでガラリと変わります。顧客が諦めている事前期待に応えることで、従来の保険サービスの価値を革新したといえます。

多くの企業では、「シニアマーケットを狙え」「富裕層をターゲットにしたい」といった具合に、プロフィールで顧客を定義しています。しかし、シニアマーケットを狙えといわれても、具体的に何をすべきか分かりません。それは「事前期待」を捉えていないからです。シニアマーケットを狙うなら、シニアマーケットの事前期待の的を見定める必要があります。「Vitality」のサービスモデルに学べば、シニアマーケットの「諦めている事前期待」は何なのか、考えてみる価値がありそうです。

 
 

※参考書籍はこちら

価値共創のサービスイノベーション実践論

日本の優れたサービス 1、2




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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/