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【連載】CS向上を科学する

2022年12月8日

【CS向上を科学する:第110回】サービス進化の4つの方向(2/2) ~日本サービス大賞を受賞したサービスの“その後”の進化を追う~

 


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

第4回日本サービス大賞の発表に向けて、生産性新聞にて日本サービス大賞の受賞企業の「その後の進化」についてインタビューしていただいた内容をベースに、前回に引き続きサービス進化の方向について取り上げます。

 

➂サービスの対象領域の進化=共創の場の進化

コロナ禍で従来の顧客との接点が弱くなったことで、顧客接点の持ち方を変革した企業や、しなければならない企業は多いことと思います。ポストコロナを見据えて、より一層のこと顧客との価値共創の場を進化させてくことは非常に重要になります。

ミスミグループ本社の「製造業の部品調達のデジタルプラットフォームサービス:meviy」(第3回・JETRO理事長賞)は、これまで非常にアナログで非効率であった機械部品の調達領域に対して、3D図面をmeviyにアップロードすることで、独自開発AIが即時に見積と納期を提示し、発注ボタンを押せばデジタルマニュファクチャリングのしくみによって即座に部品加工が始まり、最短翌日出荷という圧倒的なスピードを実現しています。このサービス自体が既に、アナログな部品調達をDXする「共創の場の進化」であると言えます。

このmeviyは今年の10月に、グローバル展開を本格化しています。モノづくり大国である日本で生まれ、プロフェッショナルエンジニア向けに進化してきた本サービスが、いよいよグローバルに価値共創の場を拡大しようとしています。たとえば世界一のEC大国である中国に対しては、オンラインサービスに厳しい目線を持つユーザーにも通用するよう、UI・UXを進化させ、meviyの操作時間が1/3に短縮できたといいます。共創の場を変えることで、その場に合わせた新たなサービス進化の糸口になるのだと思います。

従来の共創の場の上に立って、サービスの進化を加速することも大切ですが、その枠組みを取り払って、共創の場そのものを革新することにチャレンジしてみるのも良いと思います。あるいは、その場を、これまでとは違う領域に拡大することで、従来の場の上ではできなかったようなサービスの進化が実現したり、その進化が加速するかもしれません。共創の場そのものの進化について、一度考えてみる価値はありそうです。

 

➃サービスの対象者の進化=共創の主体の進化

サービスの価値は、提供者だけで生み出すことはできず、顧客との“共創”によって生み出されるものです。だとすると、「誰と」価値を共創するのか?これは、非常に重要な問いになります。この価値共創の主体を革新することで、サービスの大きな進化が実現しています。

Ubieの「事前問診システム:AI問診ユビー」(第3回・厚生労働大臣賞・審査員特別賞)は、医師が患者に行う問診をAIによってタブレットやスマホで代替することで、医療従事者がより患者と向き合う時間や環境を実現するサービスです。これは従来、病院を相手にサービスとして展開してきました。そして昨今のコロナ禍においては、このサービスを一般ユーザーを相手に公開し、病院に行かなくても症状を入力するだけで可能性の高い病気を示唆してくれるサービスへと進化しました。医者にかかる前のプロセスにいる一般ユーザーとの価値共創を実現しているのです。

また、先述した顧客参加型の家づくりで家族の絆を紡ぐサービスを提供するフォレストコーポレーションにおいても、コロナ禍で価値共創の主体の革新が加速しています。1つは、県外から長野県への「移住者」。もう1つは、長野県にオフィスをつくる「法人」に対して、木を選んで伐るところから始まる「オフィスづくり事業:サードオフィス」の展開です。このサードオフィスは、第1のオフィスを会社、第2のオフィスを自宅などでのテレワークとして、第3は従業員同士や顧客との絆を生む目的で森の中にオフィスを作ろうというものです。このサービスは、日本サービス大賞を受賞した顧客参加型の家づくりサービスモデルの魅力を活かしながら、価値共創の主体を「法人」に切り替えることで、新たな事業へと進化していると言えます。

価値共創の相手は顧客であったり、地域や、ビジネスパートナーなど、様々かと思います。たとえば顧客との価値共創を考える場合、その“顧客”とはいったい誰なのでしょうか。様々な顧客を十把一絡げに「顧客」と捉えては、サービスは進化しません。あるいは、これまで接点を持ってきた顧客が「顧客の全体像」とは限りません。価値共創の主体である顧客は誰なのかを見つめ直し、顧客の捉え方や価値共創における関わり方を革新することで、サービスを大きく進化させる糸口を見出して頂ければと思います。


他にも、日本サービス大賞の受賞がきっかけで、星野リゾートとwash-plusのコラボレーションが実現したり、サービスモデル自体をフランチャイズ展開してほしいとの要望が集まった事業者があったりと、今回紹介しきれなかった事例や、より詳しい進化の過程はありますが、このように日本サービス大賞を受賞した企業のその後の進化に着目してみると、これからの時代に向けたサービスイノベーションや進化を進めるための糸口が見えてきました。まず現状のサービス事業のサービスモデルを可視化してみると、進化の芽を見つけられるかもしれません。そして、他社の優れたサービスを、サービスモデルの観点で分析(サービスモデルマーケティング)してみると、自社だけでは発想できなかった進化のアイデアが得られるのではと思います。そんな思いを込めて、象徴的な事例をいくつか紐づけてきました。さて、今年発表される第4回日本サービス大賞の受賞サービスも、是非皆さんの目線で、サービスモデルをひも解いてみて頂ければと思います。どんなサービスが表彰されるのか、非常に楽しみです!

 
 

※参考書籍はこちら

日本の優れたサービス 1、2





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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/