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【連載】CS向上を科学する

2021年7月9日

【CS向上を科学する:第96回】進化のエネルギーを生むサービスの付加価値設計~優れたサービスに見えている風景~

 


 

松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己

 

 

ここ数回で、第3回日本サービス大賞の受賞事例をひも解いてきました。これまで多くの受賞サービスに触れさせていただき、進化の速さと変化への前向きさに感心することが多々ありました。このエネルギーはどこから来るのか。それは、根性論ではなく、これまでの経験に裏打ちされたサービスを進化させる自社流のロジックと、成功体験で得られた確信によるものが大きいように感じています。
これから、この進化のエネルギーを手に入れるにはどうしたら良いのか。この問いは、当コラムの当初からのテーマでもあります。そこで今回は、当コラムで取り上げてきた「サービス設計」を基点にして、サービス事業の進化のエネルギーが、どうやって生まれてくるのかについて取り上げたいと思います。
 

まずはこれまでのコラムの“おさらい”です。「サービス設計」とは、ここでは分かりやすいように「事前期待の的」と「サービスプロセスモデル」の2点セットだと定義します。「事前期待の的」の設計次第で、サービスの価値はガラリと変わります。「サービスプロセスモデル」は、その価値をサービスとしてどのように実現するのかの具体策を設計するものです。「サービス設計部」という役割すら存在しない企業が多く、精神論や経験則が重視されがちな“サービス”。このサービスを設計することで、現場の知恵と工夫を組織の力に変えるのです。
(詳しくは、こちら。第2回 事前期待を科学する(1/2)第10回 「サービスプロセスのモデル化」で共創サービスを設計する(1/2)
 

組織的に進化を積み上げられるようになる

この「サービス設計」が直接的に生み出す主な変化として、これまでに触れてきたのは次の2点です。

(1)組織的に付加価値サービスを体現できる~現場や個人任せのサービスから脱却できる~
現場や個人の経験やセンスに頼り切りになりがちなサービスの付加価値の発揮。これでは闇雲に取り組んでしまい、忙しさに負けて現場がどんどん疲弊していきます。付加価値サービスを見える形に設計することで、その実践アクションに組織的な努力を集中することができるようになります。

(2)経験知を積み上げ型でサービス進化に活かせる~同じことの繰り返しから抜け出せる~
この変化の時代に、サービスも自己革新を繰り返す必要があります。しかしサービス設計がないと、そのための議論や経験知が消えていってしまい、過去から何度も同じような取り組みが繰り返されているケースは少なくありません。サービス設計が日々の気付きや経験知の受け皿になることで、着実にブラッシュアップを積み上げて行けるのです。
 

顧客との関係性と、従業員の目線を変える

サービス設計によって生まれる変化はこれだけではありません。顧客や従業員自身に大きな変化が生まれることが、サービス進化の鍵を握っています。

(3)顧客からのフィードバック質が格段に高まる~価値ある情報が見つけやすくなる~
サービスは顧客と一緒に作る“共創”であるため、提供者がどの事前期待に応えるかによって、返ってくるフィードバックはガラリと変わります。他社とは異なる事前期待に応えれば、他社では得られない情報がフィードバックされます。顧客にとって価値ある事前期待に応えれば、顧客から発信される情報の質は各段に高まります。
加えて、サービス設計として「事前期待の的」が明確になることで、情報の洪水の中から、その“的”に当たる情報が浮き出てきます。色んな事前期待の顧客からの情報をごちゃ混ぜにして分析していたときには見えていなかったインサイトが得られるのです。
このやり取りを繰り返して、価値ある情報が見える化されてストックされることで、他社との圧倒的な差別化になったり、新たなサービス開発の種が見つけられるようになります。
多くの企業がVOCやCSアンケートなどで顧客からのフィードバックを集めていても、うまく活かせていない実情がありますが、サービス設計がその問題を解決する糸口になるのです。

(4)従業員の目線が上がる~顧客プロセスの全体像を見渡せるようになる~
サービス設計は、従業員の目線を上げる効果もあります。でも触れたとおり、「事前期待の的」によって、顧客から得たフィードバックから価値ある情報を見つける力が高まります。加えて、「サービスプロセスモデル」によって、顧客との価値共創の全体像を、プロセスの流れで理解できることで、「顧客プロセス」の全体像を見渡せるようになります。現場はどうしても「自分の役割」に専念するあまり、近視眼的になります。“他部門のことは関係ない“というスタンスになり、顧客サービスのバトンが繋がらないことも多々あります。「提供プロセス」ではなく、「顧客プロセス」の全体像が見渡せることができれば、付加価値を体現するために自分はどう動くべきか、サービス全体がどう連携すべきかを一人一人が考えられるようになります。プロセスの流れの中で、価値のバトンがしっかりとつながるようになるのです。
 

サービス設計が変化を確信に変える

そしてもう一つ重要なのは、こうしたサービス改革の結果として生み出される変化や成果が、「まぐれ当たり」ではなく、自分たちが生み出したのだという確信です。

(5)成果や変化への納得感が進化へのモチベーションになる~変化への抵抗感を乗り越えて、意思決定を集められる~
サービス改革が成果にどの程度の貢献をしたのか、証明しなければならないと悩まれるケースがあります。しかしサービスは顧客との共創であるために、外部要因が複雑に絡み、100%正確に証明することは困難です。しかし、現場は分かっています。このサービス設計が役に立ったのかどうかを。業績が向上したり、外部機関から「顧客満足度No1」と評価されても、社内は全く納得感を持っていない企業は意外に多いものです。「まぐれ当たり」では、再現したり、積み上げたり、継続することはできません。サービス設計を運用することで得られた成果や変化だからこそ、納得感と貢献感があり、再現や積み上げだけでなく、継続して取り組むモチベーションになるのです。サービスの付加価値をサービス設計として、精神論や経験則ではなく、論理的に説明できるからこそ、変化への抵抗感を乗り越えてチャレンジする勇気が生まれるのです。
 

このように、サービスの付加価値を設計することは、組織的なサービス力を高め、継続的に積み上げていくだけでなく、顧客からのフィードバックの質と従業員の目線が上げ、生み出した変化や成果への納得感や貢献感が高まめることができます。これによってサービス事業は、現場が進化を主導するイキイキとしたエネルギーに溢れる風景に変わるのです。
 

 
※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~
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<筆者プロフィール>
   


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120905/

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/