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【連載】CS向上を科学する

2020年12月3日

【CS向上を科学する:第90回】社会における役割を変革する交通インフラサービス~イーグルバス株式会社・つばめタクシーグループ(第3回日本サービス大賞 地方創生大臣賞)~

 


 

松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己

 

 

ついに第3回日本サービス大賞の受賞サービスが発表され、注目を集めています。今回は、地方創生大臣賞を受賞した2つの交通インフラサービスの共通点をひも解きたいと思います。1つは、「送客」の枠を越えて地域おこしに主体的に取り組む路線バスとして受賞した“イーグルバス株式会社”。2つ目は、タクシー運転手が介護士や警備員の資格を保有することで、「移動」の枠を越えて顧客のお宅の中までサービス提供できる高付加価値化を実現した“つばめタクシーグループ“です。


イーグルバス株式会社
ICTと地域観光興しによる持続可能な交通まちづくり

受賞事例の詳細はこちら

多くの地方路線バスが赤字運行である中で、これまでイーグルバスは、ITを活用して運行データを分析する科学的手法を融合させて、運行ダイヤの最適化を図り、路線バスの黒字化を実現してきました。バスにGPSと赤外線乗降センサーを設置して運行状況を見える化。その情報を活かして「ダイヤ最適化のエキスパートシステム」により、コスト削減と顧客ニーズに対応するとともに、運行の評価と継続的改善サイクルを回しています。これにより、路線バス事業の収益基盤を固めてきました。

今回の受賞は、この事業基盤をフル活用し、需要を創造するサービスモデルを構築して、地域おこしに主体的に貢献しています。これは、地域における路線バスの役割を「送客(顧客を送り届ける)」から「創客(顧客を新たに創造する)」に変革しているといえます。

具体的には、「ハブ」として各路線が集約する地点を作り、そこに商業施設などを併設することで、過疎地に新たな賑わいを生み出すというものです。「ハブ」を作ることで、長い路線を分割できるため、バスの台数を増やさずに運行密度を高められ、利便性が格段に高まります。さらに「ハブ」に商業施設を併設することで、単なる通過点ではなく、旅や移動の目的地を新たに作り出して、需要を創造しています。

この「ハブ&スポーク方式」のサービスモデルと、行政区をまたいで運行できる路線バスならではの強みを活かして、地方自治体等と積極的にタッグを組んだ観光街づくりの主体者として、地域外からの観光客を地域に“創客“できる路線バスとして、地域活性化に大きく貢献しています。


つばめタクシーグループ
タクシー・介護士・警備員が街中に 地域を支える「あんしんネットワーク」

受賞事例の詳細はこちら

タクシードライバーの99%が警備員資格者、200名が介護職員初任者研修有資格者であり、「あんしんネットワーク」サービスとして、24時間駆け付け介護、徘徊発見など、高付加価値なタクシーのサービスモデルを実現しています。特に夜間のかけつけ介護は地域に欠かせないオンリーワンサービスだといいます。

このサービスにおいてタクシーは、「地域の移動インフラ」という役割の枠を大きく越えています。「人と物を運べるサービススタッフが巡回する『地域の生活インフラ』」としてタクシーを位置づけているのではないでしょうか。移動インフラとしてのタクシーでは決してできない、介護や警備といった顧客の“自宅の中”でのサービス提供までも可能にしているのです。

その結果、高付加価値なサービスが地域社会から積極的に選ばれることで、例えばドライバーの年収は業界平均より50万円も高くなっています。資格取得は単なる話題性や小手先の差別化ではなく、タクシー事業そのものの価値を変革し、事業の成長力や競争力を高める源泉になっているのです。


自社サービスの事前期待の的を再定義する

「送客」から「創客」へと、路線バスの価値を変革したイーグルバス。「移動インフラ」から「サービススタッフが巡回する生活インフラ」へと、タクシーの価値を革新したつばめタクシーグループ。その価値を実現するために、「ハブ&スポーク方式」や、「ドライバーの複合的なスキルを付加価値に変える」サービスモデルを構築していました。

ポストコロナに向けた時代の転換期のいま、これからの社会における自社サービスの価値を再定義してみる必要がありそうです。当コラムで取り上げてきた「事前期待を的」がそれにあたります。わが社のサービスは、どういう事前期待に応えることが、価値なのだろうか?どういう事前期待に応えることが、他社ではなく、わが社のサービスを選ぶ理由になるのだろうか?イーグルバスやつばめタクシーグループの事例を、ぜひ自社サービスの価値向上や変革のヒントにしていただければと思います。

 
※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~
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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120905/

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/