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【連載】CS向上を科学する

2019年10月1日

【CS向上を科学する:第79回】事例に学ぶ:サービス競争の土俵をプロセス型にシフトする~株式会社北海道宝島旅行社~

 


 

松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己

 


体験型観光サービスは儲からない。この認識を覆すのが北海道の宝島旅行社です。観光資源が豊富な北海道ですが、実は宝島旅行社は代表的な観光地には顧客を連れて行きません。あえて観光地ではないところに連れていくことで、価値を生んでいるのです。


地域の魅力を価値に変える訪日外国人向け体験型旅行サービス(優秀賞)

【受賞ポイント】
・多様なプログラムをもとにオーダーメイドツアーとして仕立てることで、高付加価値化を実現。観光地を巡るだけでは飽き足らない海外富裕層の旅行者に提供している
・地域の魅力を地域と一体となって価値に変え、観光客と地域双方に満足を提供し、他地域でも参考になるモデルである


地域の魅力は普段着がいい

日本を訪れる外国人旅行者は2018年には3千万人を超え、、4兆5千億円もの消費をしています。これを機に観光で日本の地域経済を活性化しようと、各地で取り組まれています。そうはいっても、日本各地にアミューズメントパークを作るわけにはいきません。そこで宝島旅行社が大切にしているのが、地域の「普段着の魅力」です。農家、漁師、商店街にとっての普段の営みをそのまんま外国人観光客に体験してもらうというわけです。代表取締役社長の鈴⽊宏⼀郎氏いわく、この発想をすると、北海道よりも観光地化されていない地域の方が宝の山だといいます。


やっぱり体験型観光サービスは儲からない

大阪で育った鈴木氏。学生時代にツーリングで北海道の人々と触れ合い、感激した経験がこの事業の発想もとになっています。地域のネイチャーガイドと連携して、WEBサイトも立ち上げて、体験型観光サービスを展開しました。しかし、儲けが出るような事業にはとても成り得ませんでした。そこで苦肉の策で始めた外国人富裕層向けPRがうまくヒットして、利用顧客が増え始めます。


観光地じゃない方が価値があるサービス設計

旅行慣れした海外の富裕層の期待を伺ううちに、生の日本文化を味わえる田舎の方が喜ばれることに気が付きます。地域に住んでいる人の「日常」は、外から来る人にとっては「異日常」。これをコンセプトに、ありのままの地域文化を味わえる観光サービスを組み立てていきました。

一般的には、サービスの成果に着目して、観光地としての完成度を上げようとしてしまいます。その点、宝島旅行社は真逆。観光地ではない方が価値があるというのは、サービスのプロセスに価値をシフトしてサービスを組み立てているといえます。具体的なプランをいくつかご紹介します。
 
・鹿部町の地元料理体験
地中から温泉が吹き出す間歇泉の見られる公園が観光のメインだった鹿部町。それだけでは魅力に乏しく、思うように集客できません。そこでこの地の主力産業である漁業に着目。たらこの工場見学にたらこづくり体験。中でも好評なのは、地元のお母さんたちに教わりながら旬の魚で郷土料理を作る料理教室。お母さんたちは英語が全く喋れないのですが、外国人観光客ともあっという間に打ち解け、最後は抱き合って別れを惜しむ姿も。観光客が喜ぶだけでなく、お母さんたちもやりがいを感じてどんどん元気になっていくそうです。
 
・黒松内町の車庫焼き体験
車庫焼きとは、家庭の車庫でするバーベキュー。日照時間が短く冷涼な気候が特徴的な黒松内町に根付くちょっと変わった慣習です。車庫なのに換気扇が用意してあって、いつでも焼肉ができます。車庫は道路に面しているので、道行く人々に「寄ってけ」という感じでどんどん人数が増えていくのだそう。これはおもしろい文化だと目をつけた鈴木氏は、ここに外国人観光客を混ぜてあげてとお願いしてプラン化したところ、大好評だそうです。

 
観光地ではなく、観光を通じて地域をつくりたい

「我々は観光地を作っているわけではない。観光を通じて地域を作りたい。」と鈴木氏。その地域のみんなががんばっていることを通して、できるだけたくさんの地域住民が観光客と交流し、活躍できるようにしたいと。
地域の子供たちをもっと巻き込みたい。高校卒業までに「うちの町ってすごい!」と実感しないと、子供たちは絶対にその地域に戻ってきてくれない。だからこそ、観光で子供たちを巻き込んで、外から来た人が自分の町を評価してくれてる姿を、もっと見せたいといいます。
増え続ける高齢者にも、生きがい、やりがいを感じてもらいたい。自分が地域にとって必要だという実感があるからがんばって楽しく暮らしていけるのです。

自らの地域を愛する人々が暮らしていれば、おのずと誰もがその地を訪れたくなります。そのためには地域のDNAともいえる歴史、文化、伝統、生活、誇りを、ちゃんと「有料で」体感してもらうサービス設計が必要なのです。観光サービスのプロセスに価値の重心を置いた宝島旅行社の「観光地ではない方が価値がある」という体験型観光サービスが、地方創生の切り札として日本各地で活躍する日が楽しみです。



※参考書籍はこちら
【新刊】日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~
7月初旬発売!

【既刊】日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~



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<筆者プロフィール>
  


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120654

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
   http://www.service-kaikaku.jp/