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【連載】CS向上を科学する

2019年9月4日

【CS向上を科学する:第78回】優れたサービスの圧倒的な違いはどこから生まれるのか~TESSEI、東急コミュニティー~


 

松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己

 

清掃業や管理業という一見すると地味な業界に、常識や限界の枠にとらわれずに他社とは一線を画している優れたサービスがあります。他との圧倒的な違いはどこから生まれているのでしょうか。第2回日本サービス大賞の受賞事例から、そのポイントをひも解きます。
 

TESSEI:我々は清掃業ではない

ハーバード大学の教材やミュージカルの題材に採用されるなど、サービスの変革ストーリーが注目を集める清掃会社がTESSEIです。1952年に鉄道整備株式会社として発足し、現在は新幹線車両や駅コンコースの清掃業務を担っています。新幹線が駅に到着したら、7分間で全ての座席を進行方向に回転し、頭当てカバーを交換、テーブルを拭き、ゴミを回収し、窓ガラスまで拭きあげます。その仕事ぶりは海外から「セブンミニッツミラクル」と評されるほどの驚きをもたらしています。ホームに並んで、発着する新幹線に向かって一礼する姿もかっこいいと評判です。

清掃業といえばハードで地味な印象。TESSEIも以前はそうでした。そこから今の姿に変革を遂げたのです。その原点は、2006年から始めた『我々はサービス業である』という意識改革でした。「自分たちはどうせ清掃業なんだから」と自分自身にレッテルを貼るのはやめよう。我々が提供しているのは清掃サービスではなく、
「旅の思い出を提供するサービス」だと。

自分達が清掃している姿は、駅のホームで乗車を待っている顧客から、新幹線の窓越しに見てもらえている。それを意識することで「裏方の仕事」というのは、自分たちの勝手な思い込みだったことに気付いたのです。勝手な思い込みの枠を外して、表舞台に立つ気持ちで清掃を見てもらおう。もっと駅の利用者に寄り添おう、と。今ではこれが「新幹線劇場」と呼ばれるまでになりました。
 

東急コミュニティー:マンション管理は建物管理サービスではない

いまコミュニティー形成が重視されていますが、この言葉が注目されるはるか前、50年前の創業時から「コミュニティー」を社名に掲げているのが、東急コミュニティーです。建物だけでなく、人と人とが関わり合う環境をつくりたいという思いで、この社名がつけられたといいます。同社は実は、マンション管理業界のリーディングカンパニーです。これまで数多くの取り組みが、マンション管理の規約や業界の新常識として取り入れられてきました。業界をリードする東急コミュニティーは何を目指しているのでしょうか。

マンション管理は、建物の維持管理サービスだとするのが一般的ですが、同社は違います。マンション管理サービスは建物の管理ではなく、「ふるさとづくり」と定義しているのです。いまやマンションは、マイホームを手に入れるまでの仮住まいではありません。戸建てではなくマンションを積極的に選択する人が増えています。そんな住民にとってマンションは「ふるさと」であるはずです。これが、東急コミュニティー創業時からの使命感であり目指す姿なのです。
 

自社のサービスを事前期待で再定義する

これらの事例のように、サービスの定義が変わると、サービスの姿も仕事の風景も、ガラリと変わります。優れたサービスへの変革の糸口は、自社サービスを「顧客のどんな事前期待に応える事業なのか」という観点で再定義してみることで見えてきます。

サービスとは何でしょうか。その定義とは次のようなものです。
「人や構造物が発揮する機能で、顧客の事前期待に適合するものをサービスという」。
つまり、いくら良かれと思ってしたことであっても、事前期待に合っていなければサービスとは呼べません。余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と言われてしまいます。
サービスについて議論するとき、「何をしたら良いのか」「どんなサービスを開発したら良いのか」「どうやって売ろうか」と、つい打ち手を探してしまいます。しかし、そもそも事前期待を捉えていなければ、打ち手が空振りしてしまいます。だからこそ、優れたサービスへの変革では、「事前期待の的」を見定めるべきなのです。

しかし、やってみると案外苦戦します。自分たちが強みや自社らしさだと思っても、事前期待でうまく再定義できない。これでは、顧客がピンときていなかったり、それを顧客に押し付けてしまっている可能性が高いといえます。まさに、「顧客不在の壁」だといえます。

事業変革やサービス開発は、事前期待を捉えていなければ空振りします。ただし、事前期待とひとことで言っても色々あります。闇雲に色んな期待に応えることはできません。事業としてどんな事前期待に向けてサービスを磨くのか、「事前期待の的」を見定めることが極めて重要なのです。当たり前な事前期待に一生懸命応えても、当り前サービスでしかありません。価値ある事前期待を的に見定めることで、他にはないサービスを生み出したり、サービスで圧倒的に差別化できるようになります。

ちなみに、コラムで取り上げた価値ある事前期待のキーワードには、「人生観や価値観に触れる事前期待」「諦めている事前期待」「よくある潜在的な事前期待」などを挙げました。他にも「欲張りな事前期待」や「働きがいになる事前期待」などもあります。自社サービスの他との差を際立たせるためにも、事前期待の的について是非考えてみることが大切です。


※参考書籍はこちら
【新刊】日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~
7月初旬発売!

【既刊】日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~

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<筆者プロフィール>
  


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120654

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
   http://www.service-kaikaku.jp/