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【連載】CS向上を科学する

2018年4月18日

【CS向上を科学する:第57回】サービス経営人材の育成を加速する(2)~ハイパフォーマー育成の盲点と伸びしろ~

 

 




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


 

サービスは顧客と一緒につくるもの。だからこそ、サービス提供の現場で、顧客に価値を感じてもらい、事業成長にも貢献する成果を出すための勘所を心得ているハイパフォーマーの育成は、サービス事業の成長速度を大きく左右します。ハイパフォーマーは、今後のサービス事業のマネジメントや経営を担う次世代幹部候補にもなるため、極めて重要な経営テーマだと言えます。

それにもかかわらず、サービスの人材育成といえば、前回も触れたように「失点をなくすこと」に重きが置かれています。得点を増やすための人材育成は、曖昧な精神論やちょっとした成功事例共有をしている程度で、ハイパフォーマーになれるかどうかは、「個人の経験とセンス、そして本人の頑張り次第」と、現場や個人に頼り切っていることが多々あります。

そこで今回は、より効果的かつ組織的にハイパフォーマーの育成を加速するために、サービス人材育成の盲点や伸びしろを浮かび上がらせたいと思います。
 

なぜハイパフォーマーは顧客からの評価が高いのか

ハイパフォーマーは顧客からどんな評価をもらっているのかを分析してみると、業界や職種を越えて一つの傾向があることが分かりました。顧客からのサービスに対する評価は、「成果」と「プロセス」分解ことができます(第5回「サービスの評価を分解する」参照)。ハイパフォーマーは「成果」に対する評価もそこそこ高いのですが、「プロセス」に対する評価が抜群に高いことが分かったのです。


しかし、これまでのサービスの人材育成は、サービスの成果の評価に重点が置かれていました。例えば、早く正確にサービス提供するための業務研修、他社にはないサービスメニューの提供や機能を発揮するための専門技能研修といった具合です。一方で、サービスのプロセスの評価を高めるための人材育成はといえば、「OJTで経験を積みなさい」と、個人や現場の経験とセンスに頼り切っていることが多いものです。サービスのプロセスの評価を高められるような人材育成を組織的にテコ入れすることで、サービス経営人材の候補者でもあるハイパフォーマーの育成を加速することが重要なのです。
 

ハイパフォーマーはいったい何をしているのか

ハイパフォーマーから学びを得ようとしている企業は多いと思います。しかしその取り組みでは、ハイパフォーマーは「何をやっているのか」ということばかりが着目されます。これではうまくいかないことが明らかになりました。ハイパフォーマーの意識や行動を紐解いてみると、そこには2つの要素が組み合わさっていることが分かったのです。一方は「何をするか」の「打ち手」、もう一方は、「顧客の事前期待へのアンテナ」です。

ハイパフォーマーを交えて議論をしてみると、「打ち手」については他のスタッフとさほど大きな差が見られないことが多いものです。「そんなことなら、自分も以前からやっている」「それは以前やっていたけど、たいした成果にはつながらなかった」といった意見が出ることもしばしば。対して、「どんな事前期待を意識しているか」について議論してみると、ハイパフォーマンスの理由が明らかになります。普段は意識せずに直観的に事前期待を捉えていることが多いので、最初はなかなかうまく議論できないのですが、徐々に経験知と紐づき始めます。顧客の事前期待といっても、挙げてみるときりがないのですが、その中で特に重視している事前期待を絞り込んでいくと、ハイパフォーマーならではの視点が浮かび上がるのです。

ハイパフォーマーは、「顧客が特に何を期待しているのか」への感度を高めることで、その事前期待に合わせて「打ち手」を変えたり工夫を加えているのです。いくら強力な「打ち手」を磨いても、そもそも顧客の事前期待を捉えられなければ、その「打ち手」は空振りする可能性が極めて高いのです。ハイパフォーマーを育成するためには、「打ち手」を磨くこと以上に、「事前期待へのアンテナ」の方向を明らかにし、その感度を高めることが欠かせないのです。
 

掛け声だけではハイパフォーマーは育たない

「サービスのプロセスの評価を高めろ!」「事前期待への感度を高めろ!」と言われても、何をしたら良いか分からないものです。そこで、当連載で触れた「事前期待の的」や「勝負プロセス」を明確に定義したサービス設計のテコ入れが有効です。ハイパフォーマーになるためには、具体的に「どんな事前期待への感度を高め、その期待にどう応えることに価値があるのか」を、サービス設計として見える形に定義することで、人材の育成やサービスの価値向上を組織で加速することができるのです。

ただし、サービスの設計や人材育成の取り組みをテコ入れしても、肝心なサービスのマネジメントの方向性や力点がズレていては、現場はうまく動けません。結局、組織的にサービスの人材を育成し、サービスの価値を高めようと思ったら、サービスのマネジメントを担うサービス経営人材の育成や意識変革が必要になることが多々あります。そこで次回は、サービス経営人材育成の要点を整理してみたいと思います。


※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~

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<筆者プロフィール>
     

 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120654

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/