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【連載】CS向上を科学する

2015年6月25日

【CS向上を科学する:第12回】サービス事業の課題(1/2)~満足度の高いサービスの考え方~




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己



当連載「CS向上を科学する」ではこれまで、顧客満足やサービスという目に見えないものを、サービスサイエンスの観点で、その本質の理論やロジカルな捉え方を紹介してきました。少しだけでもロジカルに理解してみることで、今までよりはるかに価値のある努力のポイントや、取り組みの盲点が見えてきたと思います。今回は少し視点を変えて、サービス事業の難しさや課題について、サービスサイエンスの視点でひも解いてみたいと思います。


どうしてサービスで喜んでいただくのは難しいのか?

サービスでお客様に喜んでいただくためのポイントを掴むために、製造業とサービス業ではどのような違いがあるのか比較してみましょう。

サービスの価値観

製造業でははじめに、「材料」である原料や部品を調達します。次にこれを生産工程に運んで製品を作ります。ここに製造業の大きな特徴のひとつがあります。それは、「生産」にはお客様は直接的に絡んでいないという点です。お客様が登場するのは販売する時です。製品を購入する際にお客様は、店頭に並べられた商品を見たり、触ったり、スタッフの説明を聞いて、納得して購入していきます。これが製造業の大きな流れになります。

それでは、同じようにサービス業について見てみましょう。


まずは「材料」ですが、「サービスの材料」っていったい何でしょうか?

いざこう聞かれると、ドキッとしますよね。考えたこともなかったという方も多いのではないでしょうか。このように、製造業では当たり前なことが、サービス業では実に曖昧になってしまっていることに気づきます。サービスをロジカルに理解するためには、こういった点をハッキリさせていくことも大切です。さて、サービスの材料は何でしょうか。それは、「お客様の課題」です。お客様が課題を持ってサービスを受けに来て頂かないと、サービスを提供することができないのです。

続いて製造業でいうところの「生産」です。ここに、製造業とサービス業の極めて重要な違いがあります。それは、「サービスはお客様と一緒に作るもの」だということです。製造業では「生産」にはお客様は直接的には絡んできませんでしたが、サービスは「お客様と一緒に」作らなければならないのです。お客様と一緒に作られたお客様合わせのサービスを提供することが、お客様に喜んでいただく秘訣です。

しかしここで安心してはいけません。サービスでは、お客様がサービス利用を終えた後、恐ろしいことが起こります。たとえば美容院で髪をカットしたお客様が満足してお帰りになったとします。しかし、その後ばったり会った友人が余計なひとことを言うのです。「ねぇねぇ、前の髪型のほうが良かったよ」と。すると、さっきまで満足していたはずの気持ちがあっという間にひっくり返って、「あんなお店、二度と行かないわ!」と言われてしまう。なぜこんなことになってしまうのでしょうか。それは、サービスが目に見えなくて客観的な評価が難しいからです。つまり、サービスを受けた本人が満足した気になっていても自分の評価に自信が持てないので、他人から違う意見を言われると、あっという間に評価が裏返ってしまうのです。

このように、材料、生産、評価のたった3つの視点で製造業とサービス業を比較しただけでも、お客様に喜んでいただくためには、製造業とは全く違った価値観でサービスを提供しないとお客様には喜んでいただけないことが分かります。


製造業的価値観で提供されている日本のサービス

実は日本のサービスのほとんどが、製造業的価値観で提供されているのです。つまり、「良いサービスは喜ばれるに決まっている」と決めつけて、勝手に作ったサービスをお客様に一方的に押し付けていることが非常に多いのです。「勝手に作ったサービス」には、かなりの割合で「余計なお世話」や「無意味行為」「迷惑行為」のようなことが含まれてしまいます。これでは、お客様に喜んでいただくことはできません。それどころか、やればやるほどお客様が去って行ってしまう恐れがあります。

サービスでお客様に喜んでいただくためには、「勝手に作ったサービスを一方的にお客様に押し付けてる」、「勝手に考えた提案やキャンペーンを一方的にお客様にぶつける」といった価値観から脱却しなければならないのです。

そのために大切なのは、サービスでお客様に喜んでいただくための価値観や考え方を持つことです。当連載では「CS向上を科学する」と題して、サービスサイエンスの観点で「サービスや顧客満足の定義とその本質」に始まり、その本質を捉えたサービス向上や顧客満足向上のための努力のポイント、ワンランク上のサービスを実現するためのサービスのモデル化の方法論などを取り上げています。サービスや顧客満足は目に見えないからこそ、是非その本質をロジカルに捉えて、組織で一丸となった効果的な取り組みを進めて頂ければ幸いです。
 

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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/