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リーダーの声

2016年5月13日

株式会社大垣共立銀行 取締役頭取 土屋 嶢 氏

「大垣共立銀行の地域貢献度・お客さま満足度No1.を目指す経営
 

顧客目線
私が22年前に頭取に就任したとき、当行の若い行員たちにどんな銀行にしたらいいか尋ねて歩きました。行員たちの答えは “まず名前を変えてほしい” というものでした。「銀行の名前が長すぎる」「愛知県では大垣という地名を含めて知名度が低すぎる」。 “名前を変えてほしい” というのは、まさに自らの勤務先に誇りを持てず、企業自身を変えてほしい・・・そんな負の表れだったのだと思います。ちょうど100周年を迎えるにあたり、私は、大垣共立銀行の名前を変えるのではなく、色々な形で、“イメージを変えよう” という方向に転換することを決意しました。名前を変えるには看板や帳票の変更など相当お金がかかります。大垣市にはイビデンさん(旧名:揖斐川電気工業)や西濃運輸さんなど地元ゆかりの社名を名乗りながら、全国で支持されている企業もある。大垣の名前を恥じる必要はありませんから・・・。イメージを変えるには、やはり “顧客目線”、これが一番大事なことだろうということになりました。
銀行の都合ではなく、お客さまの都合に合わせる。サービス業として、“全国初” “業界初”のサービスを次々に打ち出してきました。
“顧客目線”を実践するにはお客さまの声と真摯に向き合うことが必要です。では、お客さまの声を収集するにはどういった形が良いか。丁度 “懸賞”の規制が改正になりまして、大垣共立銀行も懸賞をやろうという動きが始まりました。さあ、何をあげようか、ここからもう “顧客目線”です。担当者からは、白物家電、海外旅行、定期預金はどうですかという声もありました。まさか現金じゃないでしょうね。いや現金だ。とうとう銀行が、現金の当たる懸賞を出しました。しかし、1,000万円を1本だと、あまりにも射幸心が強すぎますから、100万円を10本。そして応募する条件として「大垣共立銀行ないしは金融機関に対し、ご意見・ご希望等を書き添えてください」そんな形で募集をしました。
来ました、25万通 ―― その25万通の主な意見を集めて私どもの共立総合研究所(現:OKB総研)から「もっともっと銀行」という本を出版しました。その中のいくつかのアイデアが、今、OKB大垣共立銀行の戦略の中に取り込まれていることは言うまでもありません。

ATM戦略
お客さまに対してどういったサービスをするのか ―― お客さまが銀行をご利用になる機会が多いものにATMがあります。当時、ATMの稼働には休業日がありました。年末年始や大型連休は銀行ごとに休業日が異なり、いつ稼働しているのか分からない。銀行員でも分からないくらいですから・・・。もっとお客さまに分かりやすいのは・・・年中無休が一番! ついにATMを365日動かすことにしました。 これも “顧客目線” です。実は、他の金融機関から何故そこまでやるのかとお叱りを受けたこともありますが、いつの間にか、それがスタンダードになり、今では、365日 24時間 これは当たり前のサービスになってきたのだと思います。
ATMは無機質ですから「もう少し面白いATMがあってもいいのではないか」ということで、数字や絵柄が揃うとATM時間外手数料が無料になる「スロットマシーン付きATM」、 ゾロ目で現金プレゼントする「サイコロゲーム付きATM」など、遊び心あるATMを開発しました。また、時間外手数料を半額にする「CM付きATM」 ―― スポンサーについていただいて、ATMでCMを展開し、広告収入の一部をお客さまに還元するというもの。現金が出るまでの間、ATMの画面に目が行きますから視聴率100%。ATMにも色々な形で遊び心を取り入れてきました。

また、飛騨高山地方では店舗が少ないこともあり、銀行機能を搭載した移動店舗を開発しました。それが「スーパーひだ1号」です。これにはATMも人も乗っています。ATMは通信衛星を使いコンピューターを連動させています。そしてスーパーマーケットの駐車場など飛騨地区4カ所、曜日を決めて巡回しています。
さらに、災害が起きたときにATMや、大型ディスプレイによるNEWS配信、衛生電話、テントなどを積み込んで災害地へ派遣する「レスキュー号」も開発しました。今から4年前に東日本大震災が起き、東日本の銀行の店舗が潰れてしまいATMが動かなくなってしまった。ここに「レスキュー号」を派遣しようと思いました。地銀のネットワークでATMはどこでも使えます。早速、東日本の銀行へ電話をしました。2日ほど経ち、そちらの頭取から返事がありました。「土屋さん、派遣してもらえるのは有難いけど、店舗が潰れてしまっているからまず建て直しをしなくてはいけない。それからキャッシュカードを持っていない人がたくさんいる。通帳も流されてしまった、印鑑もありません。貴重品を取りに帰って流された人もいるのです。」そんな答えが返ってきました。もうここまで来ると、生体認証しかないだろうと、 “手のひら” だけで取引できるATMの開発に着手しました。災害のときには体一つで逃げてもらえるのが一番いいだろう。まさに、その時のキャッチフレーズが「あなた自身がキャッシュカード」これでいこうということになりました。
災害が起きたら、 “手のひら” だけでお金が引き出せる。同一システムでは、まずトルコで開発され、2番目が日本 ―― OKB大垣共立銀行。お客さまにATMに行っていただいて、まず生年月日を押していただく。コンピューターがその生年月日の人のデータを全部取り出します。そして手のひらをかざしていただく、これでほぼ確定。まず間違いないだろうと思うのですが、担当者が心配して、「もし間違えて誤認識したらどうしましょう」と聞いてきました。そこで生年月日、手のひら、最後に暗証番号、この組み合わせで誤認する可能性は限りなくゼロとなり、OKB大垣共立銀行のお客さま約28万人の方に登録をいただいています。今後この2倍ぐらいの方に登録をいただければ、スタンダードとして認識してもらえ、他の金融機関でも取り入れていただけるのではないかと思っています。今のところ “手のひら” で現金が引き出せるのは、OKB大垣共立銀行のATMしか無い。一部の店舗では、すでに色々な手続きが “手のひら” だけで出来るようになっています。印鑑も要りません。ただしボールペンで名前くらいは書いていただきますが、それでも厳格な本人確認をする銀行の面倒くさい手続きは、もう無くそうという動きもあります。
そしてもう1つ新しいサービス “ワンコインエクスプレスサービス” があります。窓口が混んでいるとき、500円を出していただくと、他の事務に優先してその仕事をさせていただく。“時間をお金で買う” という思想も、サービスに使えるのではないかと思っています。

 

店舗の進化系
製造業の方に助けてもらったサービスの一つが “ドライブスルーATM” です。車を横付けすると、ATMが車に近づいて上下に動きます。ATMだけでなく銀行窓口をドライブスルーにした店舗も作りました。これは岐阜県各務原市の航空機産業の会社に知恵をお借りしています。航空機が到着すると蛇腹のタラップが近づいてくる、あれを作っている会社に話をしたら、「すぐできます」ということで、女子行員が乗った窓口が車に近づいて上がったり下がったり・・・、ごく短期間で作っていただけました。子供連れのお母さんも子供を降ろすことなく銀行窓口を利用できます。さらに “サービス業” であるからには、当然クイックなサービスを提供しなければならない。女子行員はファストフード店で、お客さまから注文を聞き、いかに早く商品を出すかというスピード感を勉強してきました。まず通常の業務であれば、約10分以内に仕事が出来るようトレーニングをしています。どうしても時間がかかりそうな時は、別の駐車場で待っていただいてPHSでお呼びするという形になっています。銀行窓口のドライブスルーは愛知県の長久手市に設置しておりますが、結構な賑わいを見せています。

OKB大垣共立銀行の挑戦
OKB大垣共立銀行に入りますと、行員は色々なところに研修に行かされます。コンビニエンスストア、テレビ局、ホテル、新聞社、製造業、コンサルティング会社、クレジットカード会社、携帯電話会社、こういった業種の研修先に、だいたい30代の中盤くらいまでの行員が1年ほど派遣されます。希望者は手を上げて行くわけですから、一生懸命仕事をしてきます。幸い、こういった研修から帰って来て辞めていく行員がいるかというと、私の記憶ではほとんどいません。今後、そういった体験をした行員が益々増えて、さらに “銀行らしくない” 新しいサービスをどんどん作り上げていってくれるのではないかと願っています。
OKB大垣共立銀行は、 “銀行業” とは自認しておりません。“サービス業” であると言っています。「過去がこうでしたから」「今までこうやってきましたから」そんなことを言う行員は、「いつから銀行員になったんだ」と叱られます。
そして、新聞の一面に、「これ以上どんなサービスが出来ますか?」この広告を出すのが私の最後の夢です。おそらく、この答えは出すことが出来ないのではないか。ザ・リッツ・カールトンの支配人が「サービスは科学である」と言っていましたが、私は「サービスというのは科学以上のものである」と思っています。奥が深いです、広いです。お客さまのニーズがかなりあります、いくらでもあります。一つひとつお応えし、理解してもらう、納得してもらう、こういった作業が “サービス業”の使命である。その背景に、色々な業種業態が繋がっているのだろうと思います。そういった意味で “OKB大垣共立銀行の挑戦” はこれからも続くのだろう。
もしお近くに私どもの店舗・ATMがありましたら、是非、手のひら認証登録をしていただきたいと思います。きっとまた新しいサービスが “手のひら” を通じてできるように、今、取り組んでおります。是非、OKB大垣共立銀行を見ていていただきたいと思います。

 

 
 (「SPRINGシンポジウム2014 in名古屋」にて)