連載コラム

  • 日本サービス大賞
  • 大人の武者修行バナー
  • JCSI 日本版顧客満足度指数
  • 書籍 日本の優れたサービス
  • SES Service Evaluation System:サービス評価診断システム
  • ご入会のご案内
  • ハイ・サービス日本300選 受賞企業の公開を始めました
  • ハイ・サービス日本300選のロゴマークが決定しました
  •  

  • リンク
  • おもてなし規格認証(運営:一般社団法人サービスデザイン推進協議会)

     運営:(一社)サービスデザイン推進協議会

【連載】CS向上を科学する

2015年11月26日

【CS向上を科学する:第19回】CS向上の努力の方向を切り替える(2/2)~得点型のCS向上とは~




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


社内で「顧客満足は大事ですか?」と聞かれれば、誰もが大事だと答えるのに、本気になってCS向上に取り組めていない。顧客満足が建前や絵に描いた餅になっている。過去からCS活動を進めてきたが、成果に繋がっていない。CSが向上しても、リピートや売上向上に繋がる気がしない。こんな悩みを抱えた顧客満足の取り組みが実に多いものです。

前回の記事では、CS向上の取り組みの方向性を分解してみたところ、経営に貢献するような成果に繋げるためには努力の方向を「得点型」に切り替える必要があると分かりました。そこで今回は、得点型のCS向上について、これまでにご紹介したサービスサイエンスの理論も踏まえて紹介してみたいと思います。

失点と得点

得点型の顧客満足度調査は、「平均値」を見ない

前回も少し触れましたが、こんな調査結果があります。顧客満足度とリピートオーダーの可能性の相関を分析したところ、お客様にリピートしていただくためには「大満足あるのみ」であり、「やや満足」と答えたお客様の実に97%がリピートしない可能性があるというものです。つまり、失点をしないための努力を積み重ねても、お客様に「大満足」していただくために得点型の努力をしなければ、リピートオーダーは増えないということです。

では、顧客満足度調査を得点型に切り替えるにはどうしたら良いのでしょうか?

多くの企業では、顧客満足度の目標値として、平均値や「やや満足」と「大満足」の合算値を据えていることが多いものです。平均値や合算値が上昇するということは、「不満が減る」という意味では良い目標だと言えるかもしれません。しかしこれは「失点」を減らしたにすぎず、「得点」が増えたとは言えません。顧客満足の平均値が上昇しても、「大満足」したお客様が増えていなければ意味がないのです。これに気付かずに、顧客満足度の平均値が少しずつ向上しているからと安心して活動を続けていても、なかなか成果は出てこないことでしょう。そして最終的には「CS活動を長年続けてみたものの、結局はコストがかかるだけで経営貢献に繋がる成果が出なかった」という不本意な結果になりかねません。

CS向上の目的をリピートオーダーの獲得とする場合には、顧客満足度の目標は平均値を高めることではなく、大満足のお客様を増やすことです。つまり、取り組みの目標を「CSの平均値をいかに高めるか」から、「やや満足のお客様にいかに大満足していただくか」に切り替えて組むことが極めて効果的です。

しかも、「やや満足のお客様」は、個人名や会社名が分かっても、「どうしたら大満足していただけるか」は分かりません。それよりもむしろ、「どんな事前期待を持った方が、やや満足と答えたのか」を知る必要があるのです。

このように、得点型の顧客満足度調査を推進するためには、これまでの取り組み方を大きく変えなければならないと分かります。

得点型のサービス品質向上は、評価項目が違う

また、多くの企業で取り組まれているのがサービス品質向上の取り組みです。この取り組み方も、失点をなくすことに注力されていることが多いため、得点型に切り替えることで大きな成果に繋がることがよくあります。

例えばサービスの現場の品質を頻繁にチェックして、品質指標の推移をウォッチしている企業は多いと思います。あるいは、ミステリーショッパーやミステリーコールを活用して、サービス品質をスコア化して評価しているかもしれません。そのチェック項目を是非見返してみてください。

すると、ミスはなかったか?お待たせしなかったか?無礼はなかったか?といった具合に、「失点していないかのチェック項目」がズラッと並んでいることに気付きます。一方、得点を評価する項目はと言えばごく一部。しかも、ホスピタリティを感じましたか?といった極めて曖昧な評価しかできていないことが多いようです。

もちろん失点をなくすことは大切ですが、失点チェックばかりでは、ミスをしないことばかり気になってしまい、現場が気の利いた得点型の対応をして大満足のお客様、リピーターのお客様を増やすためのアクションができません。これからは、得点型のアクションも評価できるサービス品質の項目も盛り込みたいものです。

そこで参考になるのが、以前紹介した「サービス品質の6要素」です。具体的には、正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象の6つです。この中でも、正確性、迅速性、好印象はお客様にしてみれば「当たり前」であることが多く、失点しないためのサービス品質と言えます。一方で、柔軟性、共感性、安心感は、得点型の評価を頂ける可能性の高い項目です。この6つを意識して、得点型のアクションも評価できるバランスの良いサービス品質向上を進めて頂ければと思います。
*サービス品質については、第6回(サービス品質向上、6つのポイント)の記事をご覧ください。

サービス品質

得点型の取り組みは、失点をなくしてから?

このように、「失点をなくす」と「得点を増やす」ことについてお話しすると、「うちはまだまだ失点が多いから、得点型はまだ早いのでは」と質問をいただくことがあります。確かに、クレームが毎日頻発している状況では、得点型の努力をしている場合ではないかもしれません。

しかし、得点を増やす努力は、完全に失点をなくしてから行うべきなのでしょうか?

実はそう呑気なことは言っていられません。今の時代、お客様は「失点がない」だけでは大満足をしてくれません。そこで、失点をなくす努力を継続しながらでも、得点型のCS向上に取り組まなければならないのです。これからは、いかに得点を増やすことができるかが顧客サービスの競争の土俵になってきます。得点型の取り組みに舵を切り、他社に大きな差を付けて、お客様に選ばれ続ける。そんなサービスをぜひ実現していただければと思います。
 

--------------------------------------------------------------------------------

<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/