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SPRING幹事より

2014年4月25日

産業戦略研究所 代表 村上輝康 氏

「サービスイノベーションの現状と展望」

 

 

 サービスイノベーションへの日本最初の経済団体の取り組みとして、2007年5月に、サービス産業生産性協議会(SPRING)が、日本生産性本部を母体として設立されてから、7年の歳月が過ぎた。この機会にわが国のサービスイノベーション全体の取り組みの現状と展望について概観しておきたい。

 

まず産業界における取り組みとして、単なる提言だけでなく、サービスイノベーションにむけての具体的な事業展開を行ってきたSPRINGの活動の成果をレビューしておきたい。

SPRINGが最初に取り組んだのは、サービスイノベーションの具体的な目標像を明確にするために、我々がベストプラクティスと考える企業・団体事例をハイ・サービス日本300選として顕彰することである。その結果SPRINGは、日本最大のサービスイノベーションの事例集積を確立し、サービスイノベーションに取り組む企業の参考に供したり、この分野の研究者の事例分析の出発点を提供したりすることができるようになった。

また、この顕彰事業が核となり、サービスイノベーション実践企業・団体の経営者コミュニティが形成され、毎年、経営者間での熱心な相互啓発活動を生み出すこととなっている。

第二の成果は、業界間比較が可能な、サービス産業に特化した日本最大級の顧客満足度調査のプラットフォームを確立したことである。SPRINGが実施するJCSI(日本版顧客満足度指数)調査では、13万人以上の回答を基に、のべ33業界、400社以上の調査を行い、結果を公表することによって、顧客の評価を起点とした業界を超えた競争を促す基盤を提供するに至っている。

第三は、サービスイノベーションに関する重層的なフォーラム組織の運営基盤を確立したことである。サービスイノベーションに向けた個別企業・団体の実務家を中心とした具体的な取り組みを促す、シンポジウム・セミナー等が随時展開されている。

第四は、サービス科学・サービス工学研究への貢献である。わが国におけるサービスへの科学的・工学的アプローチの理論的・方法論的な研究は緒に就いたばかりであるが、この分野の発展こそが、将来の産業界でのサービスイノベーションの推進力の源泉になるという基本認識のもと、SPRINGでは、このような取り組みには、研究フィールドの提供、事例紹介、経営者コミュニティとの連携促進等の形で積極的な協力を展開している。

このような活動を通じて、SPRINGは、わが国のサービスイノベーション支援組織のネットワークのハブ機能を形成しつつあり、抜本的な生産性向上や高付加価値化に取り組もうとする企業・団体に対して、啓蒙活動を行うだけでなく、より踏み込んだ取り組みに対するナビゲーションを行うことができるようになりつつある。

このように、SPRINGとしての活動は、7年の歳月を重ねて、サービスイノベーションに特化した啓発組織としての地歩を確実に築いてきたといえるが、他方、わが国のサービスイノベーションの進展の実態は、そのスピードにおいても規模や広がりにおいても、あまりにもささやかであると言わねばならない。このような現実的な認識を踏まえて、次の5年、10年にむけての展望を行っていく必要がある。

 

サービスイノベーションに取り組んでいるのは、SPRINGだけではない。この7年間に各分野で様々なイニシアティブが立ち上がってきた。

まず、サービスをエンジニアリング可能にするためのサービス工学の確立にむけて産業技術総合研究所が、2008年にサービス工学研究センターを立ち上げた。6年間の研究活動を経て、まだ適用分野は限られようが、サービスプロセスの可視化やモデル化、それを踏まえたプロセス設計や現場適用を一連のエンジニアリングプロセスとして扱える基礎ができてきている。

すこし遅れて2010年にスタートした科学技術振興機構の問題解決型サービス科学研究開発プログラムも5年目を迎え、着実に成果を生みだしつつある。それを支える大学や民間研究機関のサービスサイエンス研究のすそ野も、文部科学省が2007年から取り組んだ「サービスイノベーション人材育成プログラム」の貢献もあり、急速に広がっている。

このような、動向を加速化する最大の切り札となりそうなのが、現在、この分野を先導するアカデミックスと産官の有志を中心に進められている「サービス学会」の設立である。これは、サイエンス、エンジニアリング、マネジメント、デザイン等の分野を貫く、グローバルな総合学会をめざす意欲的なものであり、事例研究を正面から取り扱うことによって、学問のための学問でなく、産業界との緊密で実体的な連携を目指す有意義なものでもある。

 

このような環境下で推進されていくべきサービスイノベーションへの今後の取り組みとして重要なのは、まずは随所で立ち上がりはじめた科学的・工学的アプローチに対して、産学官が協働・連携して、一日も早く、企業・団体が現場で活用できるものを創出することであろう。パルミザーノレポートが出た2004年には、数える程しか無かった大学等でのサービスサイエンスの研究組織は、今では全世界で500は下らないという。この分野は、国際競争がすでに始まっている分野なのである。

第二に、サービスイノベーションのベストプラクティス事例の蓄積は、ますます重要になってくる。現在、経済産業省では、おもてなし企業経営選という切り口で新たな事例抽出と顕彰事業を始めた。このような取り組みはもっと多様な形で展開されていい。それが科学的・工学的アプローチの活性化にもつながる。また、業務革新や人材育成、グローバル化等に関わるより具体的な取り組みにとっても最良の教科書を提供するものになるはずである。このような事例の探索においては、日本国内にとどまることなく、幅広くグローバルな探索が重要であることは言うまでもない。

第三に、最も大事なのは、このサービスイノベーション分野で、どの位、新たな投資を誘発できるような取り組みが行われるかである。製造業がそうであったように、サービス産業においても、イノベーションを適切な投資なしに推進するのは不可能である。このためには、何より経営者の意識改革が必要であるが、それを促す制度的枠組みの整備は、それより重要であるかもしれない。

 

村上輝康 氏(サービス産業生産性協議会幹事)・談
生産性新聞2012年5月15日・25日号「サービスイノベーション」掲載より、2014年4月改訂