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経営者の声

2017年8月7日

医療法人ゆうの森 理事長 永井康徳 氏

在宅医療により地域を再生するへき地医療サービス

 

 

介護保険法が施行された2000年に、愛媛県松山市で在宅医療の専門クリニックを患者ゼロから診療開始し、医師になった時からの「地域で必要とされる、人に必要とされるサービスを提供しよう」という思いを持って、仕事を重ねてきました。
開業から16年経った今、常勤医が9人・職員が100人を超える多職種チームで行っております。松山市のたんぽぽクリニックは在宅患者480人ほど、西予市のへき地診療所は1,200人の地域に在宅患者が60人ほどです。松山市では、2016年2月から有床診療所も開設し午前中外来・午後は在宅診療をしています。
  

 

 

病院での看取り率が世界で最も高い国
日本は病院での看取り率が世界で最も高い国で、8割を超えています。最期を迎えたい場所として調査したところ、自宅が55%、病院が28%となっています(平成24年度に厚生労働省調べ)。しっかり死に向き合えば、家で最期を迎えたいという人は多いけれども、現状は、選択肢が与えられなかったり死に向き合えなかったりして、結局病院で8割の人が亡くなってしまうのが現状なのです。
2025年問題として、団塊世代の方が後期高齢者(80歳以上)となり、死亡者が今より40・50万人ぐらい増えると言われています。多死社会の真の意味をしっかり理解しておかないといけません。
 

 

 

在宅医療は、治せない病や老化に向き合う「Being」の医療
戦後、日本の医療は治すために発展してきましたが、今後は治らない病や老化で亡くなる人たちが増えていきます。その中で問われているのは、亡くなるまで治し続ける最期でいいのかということです。治す医療は、「Doing」の医療と言われ、病気を診ます。在宅医療は、治せない病や老化に向き合う「Being」の医療・支える医療と言われ、人として一緒に歩みます。これから多死社会を迎えるにあたり、限られた命に向き合っていくことが大切になっているのではないでしょうか。

 

赤字のへき地診療所を、在宅医療をメインにして再開
今から21年前に、愛媛県西予市にある俵津地区へき地診療所に赴任しました。
寝たきりで通院困難なことから在宅医療を始めた102歳のおばあちゃんは、「私は、食べられんなったら、おしまいやから」と点滴を拒否されました。息子さんは色々してくれと言われるけれど、おばあちゃんの最期を汚すような気がして、結局私は出来ませんでした。でも、そのおばあちゃんを自然に看取り、穏やかに亡くなられたことは、今でも忘れられません。
そして、16年前に生まれ故郷の松山に帰り、患者が求めている在宅医療は、医者が都合のいい時に訪問するのではなく、患者が必要な時に必要なだけ訪問できるものだと気付き、外来や入院ではなく、在宅だけに特化して24時間対応しようという思いを持ち、これまで進めてきました。

5年ほど前、市町村合併の余波で、以前に私がいた俵津地区へき地診療所の閉鎖が決定しました。患者さんから惜しまれ、何とかできないかという思いから西予市と協議をした結果、民間委譲という形で診療所を引き受けることにしました。
俵津診療所では、私の後任の医師が在宅医療をしない方でしたので、当時30%ほどあった看取り率がゼロになっていました。地域では毎年60人ずつ人口が減少し、高齢化率は43%となり、在宅サービス・施設サービスは全て地域外に行かなければならず、赤字になる悪循環になっていたのです。
経営を成り立たせる方法として、在宅医療をメインにしました。「住みなれた場所に最期までいられて安心できるようにすれば、患者さんはまた戻ってきてくれるんじゃないか」と、赤字の状態でしたが、診療所を再開いたしました。
 

 

松山市のたんぽぽクリニックと俵津診療所では、毎朝小一時間使ってウェブ会議をやっています。都市部の医療機関と情報共有し、方針統一を図って医療レベルを維持しています。1人1人違う在宅訪問を多職種のチームでやっていますから、情報を共有し方針を統一しておくことが非常に大切になっています。
24時間365日体制で運営されるへき地診療所ですが、医者が自分の生活や人生を犠牲にするのではなくて、疲弊しないシステムで行えば、医師もやりがいを持って医療を行えると実感しています。
 

 

在宅医療サービスが地域を救う
今回、在宅医療により地域を再生するへき地医療サービスということで日本サービス大賞をいただきました。全国の過疎地域でも直面している医療空洞化の解決モデルケースとなり得るのではないかと思っています。在宅医療の導入により、病院入院の重度患者・看取り期の患者の自宅療養が可能になり、自宅での看取りが全体的に増えていくと、医療費の削減もしていけると思っています。
本サービスが提供する価値として、以下の5つが挙げられます。  

(1)住みなれた場所で安心して暮らし続けることのできる地域の創出
これまでの俵津診療所では、在宅医療をしなかったことで、30%の自宅での看取り率がゼロになっていました。在宅サービス・施設サービス・病院は全て地域外で受診する悪循環が起きていました。結局最後に入院するのだったら地域外の病院にかかっていた方がいい、となっていたのです。
私たちのサービスは、しっかりとした24時間の在宅医療を提供し、自宅での看取りまで担える医療を提供しています。住民からは「医師の官舎の明かりがついただけで安心だ」と言われました。通院が困難になっても、住みなれた地域で最期まで診てくれる、安心していられるということが、また診療所に帰ってくる理由になっているのだと思います。 

(2)高齢化した地域ニーズに応える医療提供で、患者は増え経営も成り立つ
住みなれた地域で安心してその地域に住めることがわかると、患者さんは帰ってきました。高齢化した地域ニーズに応える医療を提供すれば、患者は増え経営も成り立つという証明になったと思います。1,200人の地域ですが、60人もの在宅患者がいます。高齢化率43%の町では、20人に1人の高い割合で在宅医療のニーズがあります。調剤薬局を併設し、診療所の維持のためにも、30分以内エリアに在宅医療の範囲を広げ、より多くの患者さんを対象にしています。 

(3)医師確保困難の打開策
医師確保困難の打開策として、松山から交代で9人の常勤医が、月~金に循環型の地域医療を行っています。朝8時半からミーティングをして、午前中は外来、午後から在宅、一晩泊まって交代する形です。循環交代ですので、新しい先生が入ったから交代してくれと医師に言うと、みんな「交代したくない、行きたい」と言うのです。週1回ではありますが、現地での診療はやりがいを直に感じることができ、心境に変化が起こるのです。医師のやりがいができるシステムを作ることで、へき地医療も変っていくのだと思います。

(4)過疎地域における医療と介護を中心とした地域づくり・街づくりで、限界集落を阻止できるのではないか
サービス開始前は、地域内の自宅での看取り率はゼロ、事業所で行われる在宅サービスや施設サービスが全くない状況でした。私たちの診療所が開設された後、自宅での看取り率が30%近くになると、地域内の訪問診療・訪問看護・訪問リハビリは、当院の診療所から行けるようになりましたし、医療がついているのだったらと有料老人ホームとデイサービスが初めて地域内にできたのです。今まで仕方なく地域外に出ていた人や地域外のデイサービスには行かないと言っていた人たちが、地域内にみんなが集える場所が出来たことで、喜んで行くようになりました。

(5)積極的な在宅医療が地域を変えるのではないか
1,200人の地域で経営が成り立てば、それ以上の地域でも十分成り立つと思います。そして、自宅での看取り率が上がれば、医療費ひいては社会保障費も抑制されます。以前、長野県の泰阜村で自宅みとり率が8割になったら医療費が半分以下に減ったという社会実験もありました。医療と介護を中心とした雇用が促進され、限界集落を阻止できるのではという思いもあります。
 

 

地域医療は、在宅医療で好循環がおきる
在宅医療をほとんどしていない地域の病院は、治すことだけではなくて、看取りまで医師がやるべきだと考えています。
在宅医療は、訪問診療や24時間対応を行うので、終末期医療や社会的入院が減って、自宅での看取りが増えていきます。在宅患者が増加して入院患者が減少すると思われますが、これからは高齢者が多くなるので、ずっと満床で入院患者が減ることはありません。
帰ることができない老人患者さんがいると他の入り口まで影響を受けることになります。例えば、ICUにいる老人が家に帰れなかったら、入り口の救急まで影響が出ます。流れがよくなると機能分担が図っていけるので、治す医療をしたい病院医師たちが治療に専念できるようになります。楽になってやりがいアップにつながっていきます。急性期病院にも人が集まったり、病院経営が改善したり、地域医療の疲弊を解決することになるのです。医療過疎地域はあえて積極的な在宅医療を行うことで変っていくと思っています。
 

 

究極の地域医療は街づくり
本サービスの今後の課題は、過疎化で弱体化した介護力の強化です。どうやって独居や老老介護で看取れる地域を作るかが課題です。独居で看取れれば老老介護でも看取れるので、施設の力を借りながら独居で看取れる仕組みを作る必要があります。
また、元気な人でもなかなか買い物に行けないことがあり、生活支援の強化がとても大事になってきます。在宅医療を積極的に行い、医療や介護でしっかり地域づくりをすれば、雇用も増えていくのではないでしょうか。一つの社会実験として、この小さな地域で在宅医療の推進により、自宅での看取り率を増やすことで医療費・社会保障費がどんな風に変わるかを見ていきたいと思います。そして、この取り組みをどうやって全国・都市部へ広げていけるかも考えていきたいと思います。
究極の地域医療というのは街づくり、という視点が医療従事者には必要で、今後の超高齢多死社会ではとても大事になってくると思います。この賞に恥じないよう、さらに全国のモデルとなるような取り組みができるように、頑張っていきたいと思います。

(「日本サービス大賞フォーラム」より)

 

※医療法人ゆうの森の「在宅医療により地域を再生するへき地医療サービス」は、第1回日本サ―ビス大賞地方創生大臣賞を受賞されました。