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リーダーの声

2017年5月22日

社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長 神野 正博 氏

「“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービス」

 

 

恵寿総合病院は、石川県七尾市を中心に能登地域で展開している社会医療法人董仙会グループの一つです。
石川県七尾市を含め地方は人口減・高齢化社会です。サービスという観点だけではなく、これから縮小する社会の中で経営戦略の一つとして私たちは “恵寿式”地域包括ヘルスケアサービスというものを掲げています。
  

“恵寿式”地域包括ヘルスケアシステム
厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムとは、真ん中に患者さんがいらっしゃって、医療、介護、生活支援・介護予防が取り囲むこととなっていますが、私たちが考える地域包括ケアシステムは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムと考えております。
 

 

 
厚生労働省の資料にある生活支援と介護予防を見てみますと「老人クラブ・自治会・ボランティア・NPO」という互助の世界が主になっていて、お金をいただかないで本当に回るのだろうかと、大変疑問に思っておりました。
そこで、私たち病院・介護保険施設・あるいは生活支援企業が、お金をいただいて生活支援・介護予防することを考えました。例えばフィットネスクラブが、通常のようにお金をいただいて生活支援と介護予防に頑張っていただく。個人商店の街のお弁当屋さんがお弁当を配ることによって見守りサービスをすることで、地域全体の中で包括・統合されたヘルスケアが出来る、これが将来あるべき地域包括ケアシステムだろうと思いますし、私たちが目指す“恵寿式”地域包括ヘルスケアシステムです。
これらの施設、クリニック、薬局、あるいは生活関連企業の方々と同盟を結んで、一人の患者さんに対して全てのサービスを垣根なく提供できる、これが夢であり目指していきたいと思ったことであります。
 

 

 
今、医療の世界では、救急患者さんから在宅医療までの垂直連携、また医療と介護の水平連携が言われています。地域包括ケアシステムというのは、まさにこの2点を目指しているものですが、人は生涯、その時々を通じて、医療・介護・児童福祉、福祉・高齢者福祉と関わりを持つものと思います。その生活の中の健康・病気をライフログ・時間軸のようなもので見据えていくと垂直と水平、時間軸を入れて3Dになりますし、そこに医療・介護・健康などプラスアルファを加えると4Dサービスになるかもしれません。そのことによって、私たち医療関係者・各事業者においても今までの医療・介護サービス枠を超えて、ヘルスケアサービスに参入できる可能性があると思います。それが、地域振興や安心の街づくりにも繋がっていくと考えています。
   

アフターサービスのいい医療・介護をやりたい
「先端医療から福祉まで「生きる」を応援します」というのが、私たちの一番の戦略です。それは、アフターサービスのいい医療・介護をやりたいということです。例えば救急車で運ばれてきた方の手術が終わると、家族の方が介護をすることになります。命を助けた後にも面倒見よくできることが、救急・急性期病院にとってのアフターサービスであります。また、デイサービスセンターにとっては、後々どこまで面倒を見られるのか、急性になった時はどうするのか、その処置が終わった後はどうなのかということです。
私たちは、面倒見がいい、アフターサービスのいい組織をつくっていきたいと思っています。そこで、全ての施設が同じID番号で、同じカルテになるようITでつなげました。私たちのグループは七尾市を中心に能登に集積しています。その地域全体で、患者さんを見ていこうという考え方が私たちの大きな戦略ということになります。
   

けいじゅヘルスケアシステムの戦略
私たちのグループには沢山の施設がありますが、組織の土台はとても大事だと思っています。ワンファクトの医療、介護、福祉には、統合された電子情報とコールセンター部門の情報システム、そして、材料やお薬の管理システム、給食管理システム、ファシリティマネジメントサポートシステムのサポートシステムが必要です。もちろんパートナー企業と一緒に土台を支えることも大切だと考えています。
  

 

 

戦略として、一つ目に、組織、施設、事業の統合を図っています。日本には医療関係でも様々なグループがありますが、同じグループの中でも皆が同じ方向を向いていないのではと思うことがあります。本部制をとり全体の組織を一本化するのが、私が一番注力しているところとなります。
二つ目は情報です。情報は、医療、介護、福祉を1カルテで全部の情報を統合していくと同時にバックで動かすシステムも統合していくことです。
三つ目に、ビジョンの統合も必要になってきます。全職員の目標管理については、バランススコアカードを使っていきます。
四つ目の価値観は、事業譲渡・統合などで組織が大きくなっているため、途中から入ってきた方々に同じ方向を向いていただくため、自分たちの行動指針が必要だと思っています。Keiju Innovation Hubという教育センターを充実させて、医療に限らず介護や様々な部門の職員を集めて教育を一元化しています。
 

「“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービス」と「けいじゅサービスセンター」
“恵寿式”地域包括ケアサービスは、統合型電子カルテのワンファクトと、患者・利用者の方々からのワンコール、電話1本でこのデジタル情報と繋がるワンストップのヒューマンインターフェースをつくったもので、その周りのいろんなサービスへ繋がっていくことであります。
  

 

 

ワンストップのけいじゅサービスセンターでは、三つの仕事をしています。
B2C(ビジネス・ツー・カスタマー)は、対お客様です。
インバウンドとは、病院だけではなく受診・介護保険施設などの予約、クレーム対応を受ける業務ですが、全て1カ所で同じ画面を見て管理をしています。アウトバウンドとは、こちらから働きかけをする業務で、電話をしてお客様との調整や事前のお願いなどをします。定期受診の勧奨も行っています。例えば、半年後のMRI予定を登録、お知らせができますし、送迎車の予約も一度にできるようにしています。
B2B(ビジネス・ツー・ビジネス)は、いわゆる連携機関である病院・クリニック・介護のケアマネージャーさん・介護保険施設からの紹介を受ける窓口、または照会を行う窓口となります。
 そしてもう一つ、B2E(ビジネス・ツー・エンプロイー)は、従業員に対しての満足度を高めるべく、介護カルテまでの書類の一括作成・電子化を入力センターで行っています。センターが代行入力することによって、現場での本来業務が出来るようになりますし、生涯継続的な情報を一元管理していくことも出来ます。
 

 
これらのきっかけは、2000年に介護保険制度が始まったことです。いろんな介護保険事業所ができ、患者さんから「事業所ごとに電話が違う。どこに電話をすればいいんだ。」というクレームを受けたことで作ったのが、けいじゅサービスセンター(コールセンター)です。毎年少しずつ事業を増やしていきました。サービスの予約・キャンセル・変更受付、電話による満足度調査の実施、連携の受付窓口、健診入力支援、補助金事業として子育てコールセンター、脳卒中で地域と連携する登録データの入力センターなどです。
2010年からは入所施設の記録入力、2013年からは外来予約の受付センター、昨年はオンデマンド送迎車の予約受付と充実をさせてきました。

 成果の一つとして、外来再診の予約電話受付が上がったことがあります。病院受付は予約1時間前でないと機械が通らないので、予約時間に来る習慣をつけてもらうのです。すると、待ち時間の減少・病院スペースの縮小・職員のストレス減など大きな効果がありました。現在では90%近くの予約率になっています。また、整形外科にかかっている患者さんが、風邪を引き内科に行きたい時、サービスセンターに電話をすると、「内科は今混んでいますので緊急の方は救急へお願いします。そうでなければ11時になったら空きますので、11時に来てくださいね」といったやり取りも出来るわけです。あわせて人件費の採算も見合うようになりました。
 

生涯活躍のまちへ
これまでの業務の枠の外や生活支援にビジネスチャンスがあるかもしれないと考え、2015年3月、病院跡地に高齢者支援住宅メディカルホーム・ローレルハイツ恵寿を作り、家具つきのウイークリー・マンスリー利用を可能にしました。例えば患者さんの家族の方が宿泊したり、退院許可が出た患者さんが宿泊できるようになっています。
  

 

 

新たな生活支援サービスでは、地域を回る乗り合い送迎車「楽のり君」を昨年から運行しています。高齢者ドライバーの事故が非常に増えており、運転する機会が減って病院に来られなくなる方が増える可能性もあるため、このような送迎サービスを考えました。これも先ほどのコールセンターが受け付けて処理をすると、自動的に運転手に連絡がいき、現場を走ることが出来るようにしています。
 

 
商店街の中に、健康よろず相談(まちの保健室)というお店を出店しました。例えば、「iPadって何?」という講座をやったら、結構人気なのです。iPadのSiriで日光東照宮と音声入力をすると、グーグルアースで日光東照宮を参拝できるのです。それを覚えたおじいちゃん、おばあちゃんたちは、いろいろな所へ行き大変盛り上がることもあります。直接の医療でないようなもので人が集まる場所を作る。それは、今後私たちと触れ合っていく、インターフェースを持つお客さんを増やすことになると思っています。

 高齢者の増加は、日本の大きな問題とされるでしょう。日本版CCRC構想有識者会議では、お年寄りを真ん中にして、医療・介護、社会活動、生涯学習、地域との協働を含めた「生涯活躍のまち」作りについて話し合われています。地域包括ヘルスケアシステムの医療介護の世界は、「生涯活躍のまち」、安心の街づくりの中にあると考えています。私たちは街のためにできることを一生懸命行う。街の方々は、私たちを利用し私たちも協力する。大きな中にお互いが存在しているのが、これからの姿だと思います。

 これから人口が減り縮小していく社会の中、地域をデザインする必要があります。私たちは地域包括ケアシステムの中で何ができるかを考えていきたいと思います。いかにお客様とたくさんの関連を持ち、触れ合って関係していくか。垣根なくサービスを提供し、私たちを利用してくださる方には、アフターサービスをよくしていきます。地方における生き残り戦略の一つとして進めて行きたいと思います。また、ITデジタルと電話等アナログとを両方利用していき、これからもっと枠の外への新たな地域づくり、あるいは健康づくりをやっていきたいなと思っております。私たちは、地域総力戦の一つの駒になっていきたいと考えています。
 

(「日本サービス大賞フォーラム」より)

 

※社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院の「“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービス」は、第1回日本サ―ビス大賞総務大臣賞を受賞されました。