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【連載】CS向上を科学する

2017年2月20日

【CS向上を科学する:第40回】事例に学ぶ優れたサービスのポイント:「恵寿総合病院」

 




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


 

今回は「第1回 日本サービス大賞※」の受賞サービスの中で、組織や役割の枠を超えるサービスで高い評価を得ている事例を紹介したいと思います。サービス事業では、組織や役割の境目で、実に様々な問題やもったいない失点が起きています。そんな問題意識のあるサービス企業にとって、ヒントになる事例なのではと思います。

※サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度

 

第1回日本サービス大賞 総務大臣賞
“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービス(社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院)


出典:第1回 日本サービス大賞 

恵寿総合病院は「医療介護統合電子カルテ」の導入によりIDを一元管理し、診察・入院・投薬記録から、介護履歴や検診の予約まで、患者一人ひとりの情報を一元管理し、医療と介護の境目の無い包括的なヘルスケアサービスを実現した、ICT利活用の革新的なモデルとして総務大臣賞を受賞しました。このコラムでは、このICT利活用の部分ではなく、本サービスの特徴の一つでもあるサービスセンター部分に着目して事例を分析してみたいと思います。

恵寿総合病院のある石川県の能登半島は高齢化の進んだ地域であり、同院に救急搬送される患者や入院患者の約七割が六五歳以上の高齢者です。そのため、病院が担う急性期医療が終わった後も、介護サービスを必要とする人が大半を占めるのですが、退院後も介護が必要となる場合には、新たに介護を受けられる施設やサービスを探さなければなりません。これは患者や家族に大きな負担になります。

そこで、総合病院や介護老人福祉施設などを運営する恵寿総合病院は、グループすべての施設(病院、診療所、介護施設、障がい者施設、健康増進施設など)でワンストップで地域包括ヘルスケアサービスを提供するための窓口として、コンタクトセンター(けいじゅサービスセンター)を整備したのです。医療や介護にまたがる問い合わせや、すべてのサービスの予約を“電話1本”で行え、次回の受診や検診まで期間が空く場合には、受診時期が近づくとコンタクトセンターから電話連絡もしてもらえます。結果、サービスセンター利用率は、2014年には74パーセントにまで上昇しています。

さらには、実際の現場で介護を行うスタッフに代わりコンタクトセンターが介護記録の入力を代行しています。これにより介護スタッフの業務負荷が大幅に軽減され、介護職員1人当たりの実質介護サービス時間が以前の3倍に増加しました。コンタクトセンターが地域包括ヘルスケアサービスの要を担っていると言えます。

【受賞理由】
境目のない包括的なヘルスケア(医療・介護・福祉・保健)をワンストップで提供する革新的なモデルを、統合電子カルテにより実現した、医療分野におけるICT利活用の先進的サービス。介護現場で負担となる記録入力の代行といった工夫や、病院と介護施設の患者情報をクラウド上で一元管理し効果的に利用することで患者の利便性を常に追求している。地域が取り組むヘルスケアサービスの優れたモデルである。
 


出典:第1回 日本サービス大賞

業界や組織の枠をコンタクトセンターが越える

サービスにおける問題はよく組織や役割の変わり目で起きています。お客様にとってはあまり関係のない話ですが、サービス企業内部で組織や役割が分かれているために、サービスが滞ってしまうことがよくあるのです。「前の担当者は良かったのに」「前の担当者に話したのに」「なんで次の担当者はうまくできないんだろう」という思いをしたお客様も多いのではないでしょうか。組織でサービス提供する上で必ずついて回る課題です。

今回取り上げた恵寿総合病院は、「医療」と「介護」の枠を超えてコンタクトセンターが顧客対応を担うことで、これまで「分断」されていたサービスをつなぎ合わせたワンストップサービスを可能にしています。また、特に介護現場のような顧客接点部門では、忙しさのあまりサービスプロセスが「滞留」してしまうことがよくあります。そこで、介護記録の入力など顧客接点部門の業務の一部をコンタクトセンターが代行やサポートすることで、付加価値の高いサービス業務に充てられる時間を劇的に増やすことを可能にしています。コンタクトセンターがサービスの価値向上と効率化を両立させる役割を果たしていると言えます。

このように、コンタクトセンターが顧客接点で価値ある役割を担うことでサービス全体の評価を大きく向上させているケースが増えてきています。コンタクトセンターといえば、顧客からの電話やクレームを受け付ける辛い仕事という認識がまだまだ強いようです。しかし先進的な企業では、コンタクトセンターが顧客マネジメントとサービススタッフのマネジメントを一手に担うことで、サービス事業の司令塔になっているサービスもあります。他にも、コンタクトセンターではありませんが、サービススタッフの中に顧客プロセスの切れ目に寄り添う専任スタッフを設けることで評価を高めているサービスもあります。

自社のサービスを見直してみると、組織や役割の枠に囚われて提供者都合を押し付けてしまっていたり、顧客に不便や不満を感じさせてしまっている部分があるのではないでしょうか。業界や組織の切れ目がお客様との縁の切れ目になってしまっていないか、今一度サービスを見つめ直し、組み立て直してみると良いと思います。

 

※“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービスの受賞事例はこちら
 

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<筆者プロフィール>
  


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/