連載コラム

  • 日本サービス大賞
  • 大人の武者修行バナー
  • JCSI 日本版顧客満足度指数
  • 書籍 日本の優れたサービス
  • SES Service Evaluation System:サービス評価診断システム
  • ご入会のご案内
  • ハイ・サービス日本300選 受賞企業の公開を始めました
  • ハイ・サービス日本300選のロゴマークが決定しました
  •  

  • リンク
  • おもてなし規格認証(運営:一般社団法人サービスデザイン推進協議会)

     運営:(一社)サービスデザイン推進協議会

【連載】CS向上を科学する

2016年10月5日

【CS向上を科学する:第34回】事例に学ぶ優れたサービスのポイント:「りそな銀行」




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


今回で4事例目になる「事例に学ぶ優れたポイント」シリーズ。これまでに触れてきたサービスやCSの理論を活かして「第1回 日本サービス大賞※」の受賞サービスをひも解いています。これまでにななつ星、旭山動物園、キッザニアと取り上げてきましたが今回は少しタイプの違うサービスとして、銀行店舗のサービス変革に熱心に取り組んでいる金融サービスを取り上げてみたいと思います。

※サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度

 

「3ない」で進化した、りそな銀行の店舗サービス
第1回日本サービス大賞 優秀賞(SPRING賞) 


出典:第1回サービス大賞

第1回日本サービス大賞の全31件の中で今回取り上げるのは優秀賞(SPRING賞)を受賞した「りそな銀行」です。受賞理由はこう紹介されています。

『銀行窓口での“3ない(お客様が、待たない/書かない/押さない)”の導入や、全店舗17時まで営業時間を拡大するなど銀行業界においては独自のアプローチの店舗サービス。「待ち時間の半減」、「顧客スペース倍増」、「4割が顧客対応業務に充当」など効率化と顧客サービスの価値向上を両立するリテールサービスの優れたモデルである。』

お客様が銀行窓口で不満を感じている「長い待ち時間」や「煩雑な手続き」をなくす「3ない(待たない・書かない・押さない)」と、銀行側の事務を効率化する「3レス(ペーパーレス・バックレス・キャッシュレス)」を並行して進めることで、お客様の待ち時間を半減。さらに事務スペースを約1/2に圧縮して、お客さまのためのスペースを2倍に拡大。また、従来は事務に携わっていた従業員の約4割が、お客様対応業務に関われるように。これらの改革によって、お客様にとって「単なる事務手続きの場」から「相談の場」へと変わることができたというものです。

この事例から、他の業界で役立ちそうなポイントに絞って紐解いてみたいと思います。今回はサービスの中身そのものではなく、なぜ金融業界でこのようなサービス改革が実現できたのか、その改革の進め方に着目してみたいと思います。


「我々はサービス業である」の真意

ご存知の方も多いと思いますが、りそなホールディングスは2003年に公的資金による多額の資本増強を受けました。これが変革のきっかけとなりました。

しかし、サービスを改革することは簡単なことではありません。サービス改革を成功に導くためには、「ビジョン」と「危機感」と「使命感」が必要です。りそなホールディングスのサービス改革でカギになったのは、特に「危機感」です。りそなホールディングスでは、「金融サービス業」として生まれ変わるためのお客様目線のサービス改革を進めました。そのキーワードは、「りそなの常識は世間の非常識」です。

つまり、徹底的に「我々はサービス業である」ということと向き合う改革だと言えます。これを当連載で触れてきた考え方に紐づけて解説します。

サービスはお客様と一緒につくるものです。しかし日本の多くのサービスは「いいサービスは喜ばれるに決まっている」と思い込んで、勝手に作ったサービスを一方的にお客様に押し付けてしまっています。サービスの定義は、「我々が発揮する機能の中で、お客様の事前期待に適合するものをサービスという」です。つまり、いくら我々が良かれと思ってやったことでも、お客様の事前期待に合っていなければ「サービス」とすら呼ばれないということです。それは、余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と呼ばれてしまいます。つまり我々はお客様の事前期待を掴まなければ、サービスを提供することすらできないのです。

この観点で自社サービスを見つめ直した時に、今まで本当にサービスを提供することができていたのだろうかと自問自答することになります。もしかして、お客様の事前期待を掴まずに、一方的に提供者都合を押し付けてしまっていなかっただろうか。良かれと思ってやったことは、お客様の事前期待に合っていただろうか。「りそなの常識は世間の非常識」というキーワードが、実に本質を捉えていることが分かります。


いつのまにか「お客様不在」になっているサービス改革

最近、様々な業界でサービス改革が積極的に進められるようになってきました。しかしその多くは、「どんなサービスを提供したら良いか」「どんなサービスが売れるのか」にばかりフォーカスされています。サービスはお客様と一緒につくるものなのに、お客様不在の議論や取り組みが意外に多いのが実情です。お客様の事前期待に合っていなければ、それはもはやサービスですらありません。どんなサービスを提供するかを議論する前に、「我々はどんな事前期待に応えるべきなのか」を明らかにするべきです。

「我々はサービス業である」。サービス改革は、ビジョンと危機感と使命感をもって、この言葉にどれだけ向き合えるかにかかっているのかもしれません。


 

--------------------------------------------------------------------------------

<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/